[104] 座標ブレーク自動設定ツール_ティルト/ディセンタ エレメントの動作

OpticStudio

こんにちは。光学、光でのお困りごとがありましたか?

光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。 このページでは、Zemax OpticStudioシーケンシャルモードの座標ブレーク(Coordinate Break)面を自動で設定する便利ツール、ティルト/ディセンタエレメントツールの動作について説明します。

結論

  • 筆者の意見として、座標ブレーク面は基本的にマニュアル(手動)設定ではなく、ツールを使って設定することを推奨します。順序フラグなどの設定ミスを避けるためです。
  • ティルト/ディセンタツールは、選択された光学部品だけが独立して偏心するように座標ブレークを設定します。偏心させた光学部品を通過した後の主光線とローカル軸を一致させるのではない点に注意してください。

このページの使い方

このページで参考にした技術記事(ナレッジベース)は、シーケンシャル光学部品にティルトとディセンタを適用する方法 です。

技術記事(ナレッジベース)は、OpticStudioを深く知るうえで非常に有用ですが、有用な記事ほど長くなってしまいます。本ページに書かれている内容をざっと把握して、「この記事に知りたいことが書いてある!」と感じることができれば、ぜひ記事にアクセスして詳細を確認してほしいです。

座標ブレークに関する基礎的な内容は 座標ブレーク(Coordinate Break)ってなに? を、順序フラグについては 座標ブレークの順序フラグ(Order)ってなに? を参照してください。

座標ブレーク面はなるべくツールを使用して自動設定する

光ラーニングではこれまで、座標ブレーク面の機能の基礎や、重要パラメータの順序フラグについて説明してきました。これらを理解することで、座標ブレーク面を手動で設定して、光学部品を傾けたりズラす操作ができるようになります。しかし、XティルトとYティルトを同時に調整したり、面の頂点以外を中心に偏心させたり、偏心させたあとに特定の面を基準に座標を戻したい、といった複雑な座標操作をするのは難しいです。また、注意が必要なのは、私たち操作者によるケアレスミスです。例えば、順序フラグを1にしていない、等です。

OpticStudioシーケンシャルモードには、座標ブレークを自動設定してくれる複数のツールがあり、レンズデータエディタのツールバーから立ち上げて使用できます。このツールを使えば、私たちが偏心の条件を指定することで、必要な座標ブレーク面の追加や各種設定をOpticStudioが自動的に設定してくれます。

本ページでは、そのツールの中でもよく使う「ティルト/ディセンタエレメント」を紹介します。その他には、折り返しミラーの追加/削除ツール、ローカル座標系とグローバル座標系を設定しなおすツールがあります。

ティルト/ディセンタエレメントツールの使用方法

ティルト/ディセンタエレメントツールは、レンズデータエディタの上側のツールバーに配置されています。マークは「+」←のようなプラスマークのような形状をしています。クリックするとポップアップウィンドウが開き、開始面(First Surface)と終了面(Last Surface)を選択して、偏心量を入力します。順序(Order)は順序フラグです。この場合は、内因性回転と外因性回転を選択する、という意味合いが強くなります。

ちょっとしたヒントとして、回転させたい範囲をマウスのドラッグで複数行選択した状態でツールを立ち上げると、その範囲が自動的に開始面と終了面に設定されます。

図 104-1 ティルト/ディセンタエレメントツールの場所とポップアップウィンドウ。最新バージョンにはティルトのピボット点(回転中心点)を指定する機能もある。

ツールによる座標制御を確認

「OK」を押すと、座標ブレーク面が追加されて、選択した範囲の光学部品が偏心されます。ここで気になるのは、座標ブレーク面以外にもいくつかの設定が自動的に行われている点です。結果をそのまま使う分には問題ありませんが、この状態からさらに手を加える必要がある場合、これらの設定は理解しておきたいです。

図 104-2 ティルト/ディセンタエレメントツールを実行した後のエディタの様子。「座標ブレークの追加」以外に2つのソルブが設定されている。

4行目と8行目の座標ブレークの追加は、座標ブレークのよくある使い方の2行1ペアで、4行目でローカル座標を偏心させて傾いた光学部品を定義して、8行目で元の光学軸と一致するように戻します。8行目の座標ブレークは順序が1になっていて、適用するディセンタとティルトの順番が逆転しています。

7行目と8行目の厚み(Thickness)に設定されたソルブTとP

気になるのは、7行目と8行目に厚みセルです。7行目はマイナスの値(-2.0)が設定されており、これはローカル座標が-z軸方向に逆進していることを意味します。そして、セルの右側には「T」と表記されています。8行目では再び+Z軸方向に進んでおり、セルの右側には「P」と表記されています。

セルの右側にある四角の小窓は「ソルブ」とよばれるエディタの機能です。基本的な使い方は ソルブの基礎_OpticStudioレイアウトでの瞳の表示 (3 fin) を参照してください。

ソルブは、「レンズデータエディタと光線追跡の情報に基づいて、一意に決まるセルの値を自動設定する機能」です。例えば、他のセルに入力されている値をコピーするピックアップソルブや、特定の光線が光軸と交わる位置まで移動させる厚みソルブがあります。

光ラーニング、ソルブの基礎_OpticStudioレイアウトでの瞳の表示 (3 fin)

「T」は位置ソルブと呼ばれるソルブで、指定された基準面(From Surf)から「z」距離を維持するように厚みパラメータの数値を決定します。このサンプルでは、基準面に4面(1枚目の座標ブレーク面)が設定されており、距離(Length)がゼロになっています。これは、4面から距離0mmの位置に移動、つまりは厚み方向に4面まで戻るという意味になります。

「P」はピックアップソルブと呼ばれるソルブで、指定したセルの数値に係数(Scale Factor)と上げ底(Offset)を加えた結果を設定します。今回のサンプルは7面の厚み(「T」ソルブが設定されたセル)の符号を変えた数値が入力されます。

ソルブを使うと、異なる角度を入力したときなどに連動して調整する必要なパラメータの変化を自動的に行ってくれます。正しい座標制御をするうえで、とても頼もしい機能になります。

図 104-3 厚みパラメータに設定された位置(Position)ソルブとピックアップソルブ。他にも様々なソルブがあるので、積極的に使いたい。

図で理解するティルト/ディセンタエレメントツールの座標制御

Xティルトだけを適用した例を用いて、各面のローカル座標を追跡します。4行目でローカル座標を傾けて、偏心した光学部品を定義します。7行目はソルブの効果で、傾いたローカル座標のままで4行目の位置まで戻ります。8行目では順序フラグを1にした座標ブレークで4行目の偏心を元に戻します。

そして元に戻った8行目の座標を基準にして、ティルトしていない光学部品の厚みだけz軸方向に進んで9行目となります。座標ブレークの厚みは順序フラグによらず、常に最後に適用されます。次の光学面である10行目は、5行目から7行目で定義された光学部品にティルトがない状態の位置と一致しています。

この、選択した光学部品だけが独立して偏心する状態は、公差解析において有用な考え方になります。偏心した部品のローカル軸によって後続の光学系の位置が変化しないように、偏心を始めた位置に戻って、補正して、理想状態を想定して次の光学部品を設定します。

図 104-4 ティルト/ディセンタエレメントツールは、元の光軸に対して選択した光学部品”だけ”がティルトする想定で座標が制御される。

まとめ

ここでは、Zemaxのホームページからアクセスできる公開記事、シーケンシャル光学部品にティルトとディセンタを適用する方法 で紹介されている、ティルト/ディセンタエレメントツールについて説明しました。座標ブレーク面だけでなく、厚みのパラメータにソルブを設定することで、特定の光学部品のみが偏心している状態を自動的に設定できます。

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