こんにちは。光学、光でのお困りごとがありましたか?
光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。 このページでは、Zemaxホームページで公開されている技術記事、レイエイミングの使用法 (Zemax技術記事) を短くまとめます。
2022年1月25日にリリースされたOpticStudio22.1に、「強化されたレイエイミング」が搭載されたので、従来のレイエイミングについて勉強してみようと思いました。OpticStudio 22.1 リリース、新機能レビュー も参照してください。
このページの使い方
技術記事(ナレッジベース)は、OpticStudioを深く知るうえで非常に有用ですが、有用な記事ほど長くなってしまいます。書かれている内容をざっと把握して、「この記事に知りたいことが書いてある!」と感じることができれば、ぜひ記事にアクセスして詳細を確認してほしいです。
「レイエイミングの使い方」まとめ
- レイエイミング (Ray Aiming) は、OpticStudioが出射する光線の方向を自動的に調整する機能です。
- レイエイミングが必要なのは、以下2つの状況です。
- 物体側から見たときの瞳(入射瞳)の大きな収差がある場合。
- シフトやティルトによって入射瞳が物体から見えない場合。
- 瞳の収差は、瞳収差(Pupil Aberration)機能で確認できます。瞳収差の最大値が数パーセントを超える場合は、レイエイミングの使用を考えます。
- 瞳収差とは、OpticStudioが近軸入射瞳を満たすように出射した光線が、絞り面より前にある光学系の収差によって、絞り面を満たせない光線のズレのことです。
- 絞りを満たせないことの問題は、「光学系を通過する光線全体を考慮した光学解析・最適化が実行できない」ことです。数パーセント以下は問題ない、と言っているのは、光学性能の評価への影響が相対的に小さいことを根拠にしています。
- レイエイミングをONにすると、光線追跡が遅くなります。これは、レイエイミングが反復計算を必要とするためです。
- 記事にはレイエイミングによる計算時間の増加が2~8倍とありますが、これは多分誤った記載です。ヘルプファイルでは、「近軸レイエイミングより実光線レイエイミングの方が2~8倍の時間がかかる」とあります。
- レイエイミングには多くのオプションがあります。ほとんど必要ないので変更しないよう記載されていますが、必要な場面がもちろんあります。一概に「〇〇のとき△△オプションが必要」と言えないのが難しいところです。
- レイエイミングをONにすると、光線が物理的な絞り面を満たすように出射されます。これは、「OpticStudioがそうなる光線を一生懸命探した」結果です。
- 瞳収差のプロットがゼロになりますが、これはOpticStudioがそうなるようにしただけで、光学系から瞳収差がなくなったわけではありません。
- 広角レンズの場合、視野値が大きい方向からの光線の追跡に失敗する場合が多くなります。これは、近軸入射瞳の位置と、実際の入射瞳(絞り面より前の光学系の収差を考慮したときの絞りの像)の位置が全然違う位置にあるためです。
- 近軸レイエイミングは、絞りの大きさが固定されていない状況で、絞りのサイズを近軸マージナル光線の高さで決定します。
- 実光線レイエイミングは、絞りのサイズを実光線マージナル光線の高さで決定します。近軸計算ではなく実光線を使うので、光線が絞り面を満たす精度は高くなりますが、時間がかかります(2~8倍)。
- レイエイミングを使用するときは、システムアパチャーのアパチャータイプを「絞り面半径による定義」に設定して、絞り面の半径を手入力することが推奨されます。
- 最後にレイエイミングが必要なケースは、絞り面が光軸からズレているときです。
所感
この技術記事は、OpticStudioでも難しい機能に感じるレイエイミングの概要を説明しています。広角レンズ、軸外し系で必要な機能のため、最近は利用する場面が増えている機能ではないでしょうか。レイエイミングを難しいと感じさせている理由は、オプションの分かりにくさがあります。
OpticStudio22.1では、この技術記事で紹介されたレイエイミングの進化版と思われる「強化されたレイエイミング」が公式機能として実装されています。うまく使いこなすためにも、アルゴリズムの詳細は分からないまでも、意味を理解しながら使いたいですね。光ラーニングでも、引き続き勉強を続けていきたいと思います。
コメント