こんにちは。光学、光でのお困りごとがありましたか?
光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。このページでは、2021/10/18~10/22に発表された光学関連のニュースを取り上げ、OpticStudioとのつながりや、筆者の個人的なコメントを加えます。参考にしているページは、オプトロニクスオンライン、Optics.org、Laser Focus Worldなどです。
ピックアップ記事 7 本
ソニーセミコンダクタソリューションズ、ソニーLSIデザインを吸収合併
ソニーセミコン,ソニーLSIデザインを吸収合併(オプトロニクス)。両社はイメージング&センシング・ソリューション事業をとりまく市場環境の変化に対し、ソニーセミコンダクタソリューションズグループにおける、半導体設計及び設計オペレーションの一体運営ができる体制を構築することで、さらなる事業の強化を目的として統合を決定しました。
研究開発・商品企画・設計を行うソニーセミコンダクタソリューションズと、商品設計を担うソニーLSIデザインの合併です。ここ最近、多くのセンサモジュールの発表(ソニー、UV対応813万画素CMOSセンサー開発、ソニー,イベントベース方式の画像センサーを発売、ソニー,LiDAR向け積層型SPAD距離センサー発表)を続けていたソニーセミコンダクタソリューションズの組織改編です。市場導入までの開発プロセスを短縮するような目的があるのでしょうか。最近では、アプリケーションに直結するような製品発表が続いていたので、内部的には連携の強化が進んでいたのかもしれません。
キヤノン、VR映像撮影システムを発表
キヤノン,VR映像撮影システムを発表(オプトロニクス)。キヤノンは、VR(Virtual Reality:仮想現実)映像撮影システム「EOS VR SYSTEM」を新たに立ち上げ、専用のレンズ1機種とPCソフトウエア2本を2021年12月下旬に発売・公開することを発表しました。このシステムはミラーレスカメラと専用のレンズ、PCソフトウエアで構成されており、カメラに新発売の専用レンズを装着することで、VR映像の撮影を実現します。
1つのカメラレンズに、2つの魚眼レンズが横並びで接続された異形の専用レンズを装着します。1つのセンサで両レンズで結んだ像を記録します。RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYE 概要 のサイトによると、視野角180度、8Kセンサを半分にしておよそ4K(3684画素)になります。広角レンズの宿命ともいえるゴースト対策として、特殊コーティングSWC(Subwavelength Structure Coating)が施されています。どのように形成しているかは調べないとわからないですが、モスアイ構造でのARと同じ原理で反射率を抑制しています。このコーティング方式は光の入射角依存が小さくなることが特長です。ARVRデバイスが多く発表される中で(光学ニュースピックアップ (2021/10/11~10/15))、撮影システムが大手のカメラメーカから発表されたのは印象的でした。
DMG森精機、レーザ金属積層造形機を開発
森精機,レーザー金属積層造形機を開発(オプトロニクス)。DMG森精機は、レーザー金属積層造形機「LASERTEC 3000 DED hybrid」を開発しました。この製品は複合加工技術と金属積層技術を1台に融合し、切削加工と金属積層造形を1台で行なうDED(Directed Energy Deposition)方式のレーザー金属積層造形機です。
プレスリリースの資料によると、レーザ出力は3kW、スポット径は3mmと1.6mmに交換が可能とのことです。光学業界で近年注目されていた積層造形(AM: Additive Manufacturing)ですが、いまは金属材料の発表が多いように思います。ハイパワーレーザの高出力化とコモディティ化が進む中で、加工機や積層造形機も活躍の場が増えていくものと思います。YouTubeの動画も面白いです。
ソフトバンクと東京海洋大学、自動トラッキング水中光通信技術を開発
SBら,自動トラッキング水中光無線技術を開発(オプトロニクス)。ソフトバンク(SB)と東京海洋大学は、陸上から水中の遠隔操作ロボット(ROV:Remotely OperatedVehicle)に光無線通信経由で指示を与え、リアルタイムに制御する実証実験に成功しました。研究グループは画像認識によるトラッキング技術に着目し、研究を進めてきました。水平約 60度、垂直約60度の範囲で約10Mb/s以上の速度でデータ通信を行なえます。
水中光通信に関する研究発表です。お互いの位置を画像認識によって検出することで、通信光の光軸を一致させるのが特長です。撮影装置の高性能化によりデータがどんどん大容量になっていくなかで、水中での測定データを地上の潤沢な計算リソースに受け渡すための通信路は重大なボトルネックとなっていました。吸収される電波が使えないので、電波よりも水中の透過率が高い”光”を用いる試みです。通信そのものは青色LEDを用いています。将来的には1kmの通信距離を目指すとのことです。それだけ通信中のLEDの発光強度は強くなりそうです。
超小型プロジェクタ開発の TriLite、ARVRグラス用途に向けて資金調達
Micro projector developer TriLite raises €8M to boost ARVR glasses aims (optics.org)。オーストリアでレーザプロジェクタ型ディスプレイを開発する TriLite が 800万ユーロの資金を調達しました。ワンチップに収められたRBGレーザ光源、ビームを走査するスキャナ(MEMSミラー)で構成されるプロジェクタで、AR/VR/MRメガネが最終アプリケーションとなります。この資金調達は、特許ポートフォリオの強化、製造プラットフォームの構築、イノベーションへの投資に充てられるとのことです。
TriLiteのホームページによると、RGB半導体レーザが横並びに実装され、楕円ビームを円形に補正してコリメートする光学系で、3色のレーザがMEMSミラー上で重なるようにアライメントされていました。MEMSミラーは1枚で、XYの2軸を走査します。メガネのつるに収まるサイズになることがアピールされています。網膜に直接描画する方式でしょうか?多くのARVRシステムは、マイクロディスプレイの虚像を視聴者の前方に結びますが、この2次元のディスプレイがある程度の大きさになることが避けられません。レーザスキャン型のプロジェクタは以前から、米国のMicroVisionが先行しているイメージがあります。ARVR産業でどのような位置づけになるか、注目したいと思います。
Mynaric とH3 HATS、飛行機への光通信搭載を促進
Mynaric and H3 HATS boost optical links with high-altitude aircraft (optics.org)。ドイツで光空間通信システムを開発するMynaricとH3 HATS (High Altitude Technologies & Services)は、高高度長距離光空間通信を紹介する共同実証キャンペーンを発表しました。最初のデモンストレーションでは、地上と飛行機間の通信で、10Gbpsの双方向レーザリンクが実証されました。この製品は、2021年6月に開設されたMynaricの生産施設で生産されています。
ソフトバンクのニュースが水中なら、こちらは空気中です。地上飛行機間、飛行機飛行機間をレーザで接続します。レーザそのものを通信ターミナルに充てることが難しいのはもちろんのこと、超高速通信を行うためには、シングルモードファイバへの結合が必要になるため、けた違いのアライメント精度が要求されます。空気中にレーザを通す光空間通信は、宇宙用途や軍事用途など限定的なアプリケーションが多かったですが、この製品はより量産を意識したもののようです。電波による通信と光による通信、適材適所でのすみわけが進むことになるでしょうか。
EUVのブームにより、ASMLが記録的な業績を達成
EUV boom powers record results at ASML (optics.org)。ASMLは四半期発表で、3Q (7~9月)の売り上げが前年比30%増という驚異的な業績を発表しました。ちなみに、純利益では前年比64%増です(半導体製造装置ASML、純利益64%増 21年7~9月期(日本経済新聞))。これをけん引したのは、極紫外線(EUV)リソグラフィ領域への莫大な投資の成功とのことです。ASMLは3Qまでで、2020年全体の140億ユーロに匹敵する136億ユーロを達成しており、2021年全体で190億ユーロを予想しています。そのうち、半分以上をEUVツールが占めています。
昨今の半導体不足のニュースにも関連して、ASMLの驚きの(予想通りの?)業績発表がニュースになっていました。今年は何かと紫外波長領域の話題に事欠きません。大規模投資が必要になる半導体業界は、比較的波が大きいような印象がありますが、いまの好調ぶりはいつまで続くでしょうか。ニーズへの対応とともに、各社が次のイベントにどう備えているか興味は尽きません。
まとめ
このページでは、2021/10/18~10/22に発表された光学関連情報から、国内4件、海外3件を取り上げました。筆者の知識レベルで取り上げられるネタは制限されますが、これからも気になった情報をご紹介したいと思います。
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