[93] OpticStudio 22.2 リリース、新機能レビュー

OpticStudio

こんにちは。光学、光でのお困りごとがありましたか?

光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。2022年5月31日にZemaxソフトウェア一式(OpticStudio、OpticStudio STAR モジュール、OpticsBuilder、OpticsViewer)の新バージョン、22.2がリリースされました。このページでは、OpticStudioの新機能をレビューします。

リリースノートはインターネットで公開

以前はリリースノートをPDFでダウンロードしていましたが、21.3からコミュニティで公開されるようになりました。OpticStudio 22.2の日本語版のリリースノート(Zemaxコミュニティ) を参照してください。過去のリリースノートも閲覧できます。

OpticStudio 22.2 新機能

このページではリリースノートを情報源に、筆者が詳しく知らないOpticStudioの追加モジュールとなるSTARモジュールとOpticsBuilderは割愛して、OpticStudio 22.2で注目の新機能についてレビューします。筆者個人の主観が入っているのであくまで参考までとして、詳細は公式の情報を参照してください。

レイエイミングウィザード

過去バージョンの「新機能の試行」で、試験的に搭載されていたベータ機能の正式リリース版になります。使い方が難しい機能の代表格でもあるレイエイミングは、たくさんのオプションがあります。また、それらの機能がどのような効用を持っているかが、オプション名を見ても、ヘルプファイルを読んでもいまいちピンとこない場合があります。

いくつかの機能については、光ラーニングでも取り上げ、様々な検証から特性を調べています。瞳収差ってなに?_レイエイミングの使い方 (2)近軸 vs 実光線_レイエイミングの使い方 (3)キャッシュ、ロバスト、瞳シフトと圧縮_レイエイミングの使い方 (4) を参照してください。

レイエイミングウィザードは、これらの機能の詳細を知らずとも、設計中の光学系にとって最適なオプションの組み合わせを提示してくれる機能です。また、新機能の試行から改善されたポイントとして、ウィザードが提示したオプションをシステムエクスプローラに反映するボタンがあります。地味にうれしいです。

図 93-1 レイエイミングウィザードが推奨する設定。右下のボタンでシステムエクスプローラに反映できる。

気になるのは、レイエイミングウィザードを用いても推奨設定を発見できないケースがあることです。機能として仕方ないことではありますが、ウィザードが発見できなかったときは、やはり私たちが何かしらのアクションを取る必要があります。例えば、レンズデータエディタでダミー面を設定したり、アパチャーや視野の設定を工夫したりです。

筆者個人としては、「レイエイミング設計決定基準 (Decision Metrics)」が気になりました。OpticStudioが、というよりはZemaxの開発チームが、レイエイミングの使い方をどのように考えているかを知ることができるかもしれません。

強化されたレイエイミングの改善

強化されたレイエイミングは、22.1で追加されたレイエイミングの新アルゴリズムです。OpticStudio 22.1 リリース、新機能レビュー を参照してください。特に視野角の大きな広角システムを想定して強化された光線経路の探索アルゴリズムで、軸外し系への対応は今後の検討課題のようです。

22.2のリリースでは、強化されたレイエイミングが対応するアパチャータイプと視野タイプが拡張されました。現在サポートされているタイプは以下の通りです。

アパチャータイプ: 入射瞳径、像空間F/#、絞り面半径による定義、の3つです。入射瞳径と像空間F/#が今回追加されています。未対応のタイプは、物体空間でのNA、近軸実効F/#、物体の円錐角度です。筆者がよく使うのだと、あとは物体空間でのNAでしょうか(広角レンズ設計で使うアパチャータイプではないかもしれませんが)。

アパチャータイプについては、アパチャー(システムエクスプローラ)_シングレットレンズの設計(OpticStudio入門) (1) を参照してください。アパチャーは、光学系を通過するマージナル光線を定義するためのパラメータです。

視野タイプ: 角度、物体高 (視野角180度未満の場合?)、セオドライト角度、の3つです。タイプの種類は増えていませんが、物体距離が有限の時でも、角度とセオドライト角度がサポートされるようになりました。これまでは、物体距離が有限の時は物体高しか使えず、物体高は視野角180度未満でないと使えなかったので、物体距離有限の超広角レンズは、強化されたレイエイミングを使った設計を始められませんでした。

未対応の視野タイプは、近軸像高と実像高で、像側で決める視野が残っています。特に実像高の対応を待っている設計者も多いのではないでしょうか。その一方で、像側の座標を固定した状態で入射側からの経路を探索するのはとても難しいように思われます。

像空間F/#と実像高の組み合わせは、広角レンズ、携帯用カメラレンズの設計でよく使われる組み合わせなので、次の機能強化に期待したいところです。

視野タイプについては、視野(システムエクスプローラ)_シングレットレンズの設計(OpticStudio入門) (2) を参照してください。視野は、光学系を通過する主光線を定義するためのパラメータです。

ZMXファイル形式のサポート

このトピックについては、別のページで説明しましたので、.ZMXファイルの復権 (.ZOSとの共存)__Zemaxコミュニティ注目トピック (22) を参照してください。[オンラインセミナー] OpticStudio22.2 (STARモジュール含む)、OpticsBuilder22.2最新機能の紹介 [Q&A] (Zemaxフォーラム) では、日本のユーザからも.ZOSに関する質問が出ていました。.ZOSの差別化につながるような、今後の新機能開発が期待されます。

その他

22.2のリリースにはその他に、Ansys Speosへのエクスポートツール、ZRD (ノンシーケンシャルモードでの光線追跡時に保存できる光線データ) / ZBF (シーケンシャルモードの物理光学伝搬実行時に保存できるビームの電場データ) から TSV (Tab Separated Value: タブ区切り値のテキストファイル) への変換ツール、CREO 7とのダイナミックリンク対応など、拡張性と利便性の改善がありました。これらの機能については、筆者の知識が及ばないので光ラーニングでの言及は避けたいと思います。

(おまけ) 22.2 に対する反応

元Zemax CEOのMarkさんが22.2に対して、”22.2 OpticStudio release seems awfully light. Two features only, one of which was in the 22.1 release? – OpticStudio22.2のリリースはとても軽量ですね。 2つの機能のみで、そのうちの1つ (レイエイミングウィザード) は22.1リリースにありましたね?” とコメントをしていました (OS 22.2 Seems a bit light (Zemaxフォーラム))。その後、22.3を楽しみにしている!とあり、冒頭の “I love you guys” もあって、辛口の応援メッセージから愛情が感じられます。本当にがっかりしている可能性もちょっとありますが。。。

Zemaxは近年、年3回のメジャーリリースを継続していました。Ansysに買収されたことで、そのリリース計画にどのような変更があるか、また開発方針の調整にも注目しています。例えば、今回のAnsys Speosとの連携強化に代表されるような、Ansysのほかソフトウェアとの関係性強化の側面が強くなることは合理的な判断と思えます。例えば、STARとAnsys Mechanicalの親和性を高めるような機能強化とか。

知識が光に偏っている筆者としては、いろいろな分野への拡張性に触れることができるポジティブな面もありつつも、伝統的な光学機能の深化のプライオリティが下がる可能性を少しだけ危惧しています。

まとめ

2022年5月31日にリリースされたZemaxソフトウェアの最新バージョンから、OpticStudio 22.2の新機能をレビューしました。強化されたレイエイミングの継続的な強化はありがたいことです。光学業界としても、広角への要望が強いのかもしれません。特に興味深かったのは、.ZMXファイルの復権でした。自分には関係なさそうな機能でも、光学業界のトレンドを感じる意味でも、いろいろと眺めてみると興味深いです。

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