[80] 1/e2半径以上のビーム_シーケンシャルモードでレーザダイオード(LD)を設定する方法 (2)

OpticStudio

こんにちは。光学、光でのお困りごとがありましたか?

光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。このページでは、アポダイゼーションファクタを使用して、1/e2以上の範囲をカバーした半導体レーザ(LD: Laser Diode)光源を設定する方法を説明します。

結論

  • 発散ガウスビームの1/e2半値を1.5174倍すると、1%半値の発散角が得られます。
  • アポダイゼーションファクタは、(1%半値で計算したNA)2 / (1/e2半値で計算したNA)2 で計算します。
  • ビネッティングファクタは、X方向とY方向で1%半値のtanをとって、1からその比率を引き算して計算します。

このページの使い方

このページでは、Zemaxコミュニティに投稿されたトピック中から、よく参照されているもの、コメントが多いもの、筆者が気になったものを取り上げて紹介します。よくある疑問や注目されているトピックについての情報を発信することで、何かしらの気づきとなれば幸いです。

1/e2より外側の範囲までLDを設定する方法

トピックへのリンク (中国語):・シーケンシャルモードでLaser Diode光源を設定する方法

半導体レーザは現在非常に多くのアプリケーションで使用されているレーザ光源です。光ラーニングでは半導体レーザそのものの説明はできませんので、発光原理や製造プロセスについてはより適切なリソースを参照してください。

このトピックで紹介されているのは、アポダイゼーションファクタを1とした場合、つまり入射瞳のエッジで強度が1/e2になるガウスビームの設定方法でした。

しかし、ガウスビームにとって1/e2=13.5%はビーム強度としてはまだまだ有意です。仮に開口で1/e2より外側を遮蔽すると、伝搬中のビームの(特にエッジ周辺部の)強度分布は回折現象によってかなり変化します

アポダイゼーションでガウスビーム_Zemaxコミュニティ注目トピック (18) で紹介した通り、アポダイゼーションファクタを大きくすれば、1/e2半径の外側の裾野まで考慮したガウスビームが定義できます。そして、アポダイゼーションファクタの上限の目安は4.0とのことでした。

図 80-1 アポダイゼーションファクタG=6.25だとエッジでの強度比率は3.7E-6になる。

強度が1%になる範囲まで含めたLDを設定する方法

裾野を遮蔽する影響を十分小さくするにはピークの何%まで含めればよいか、という問題に明確な回答はありません。広い範囲まで含めれば精度は上がるはずですが、強度の低い領域を十分にサンプリングできる光線数がなければ意味がありません。一つの指標として、ピークの1%までを含める設定を考えます。

図 80-2 アポダイゼーションファクタ1だと0.135まで、1%まで含めるためのGは計算が必要。

強度が1%になる半幅は1/e2半幅の約1.5倍

ガウス分布の定義式から、1/e2半幅の角度を1%半幅の角度に変換します。下に示した計算を行うと、約1.5倍になることが求まります。

この結果から、まずはシステムエクスプローラのアパチャー値には、1/e2半幅で求まるNAの1.5174倍を入力することで、1%半幅まで考慮した発散ビームをカバーできるようになります

図 80-2 1%半幅と1/e2半幅の関係式。

1%まで含めるアポダイゼーションファクタの算出

以前紹介した、アポダイゼーションファクタとガウス分布の幅の関係性を分かりやすく説明したページ [1]から引用すると、アポダイゼーションファクタGは、光学系のアパチャーサイズに対するガウスビームのサイズを決定するパラメータです。その関係式は、以下のようになります。

今回、1%まで考慮した発散ビームを生成したいので、上で求めた1%半幅で求まるNAを使用してアポダイゼーションファクタを決定します

実際のLD製品の具体的な設定例

引き続き ROHM製、RLD63NPC8-00A [2]のX方向のFWHMが8°、Y方向のFWHMが30°を仮定します。1%まで含む発散ビームをシーケンシャルモードで設定するプロセスは以下の通りです。

  1. FWHMを1/e2半値に変換します。0.8493128倍で、X方向が6.795°、Y方向が25.48°です。
  2. 1/e2半値を1%半値に変換します。1.5174倍で、X方向が10.31°、Y方向が38.66°です。
  3. NAに変換します。sinを取ります。X方向が0.1790、Y方向が0.6247です。
    • 1/e2のNAも計算しておきます。X方向が0.1183、Y方向が0.4302です。
  4. システムエクスプローラのアパチャーで、タイプを物空間NAにします。値が大きい方のNAを入力するので、この場合はY方向の0.6247を入力します。
  5. アポダイゼーションタイプをガウシアンにします。
  6. アポダイゼーションファクタを計算します。(0.6247)2 / (0.4302)2 = 2.11 で、これを入力します。
  7. Y方向の発散角度が大きいので、X方向にビームを圧縮して楕円ビームを設定します。
  8. 入射瞳上のビームの大きさを計算します。1%半値のtanを取ります。X方向が0.1819、Y方向が0.800です。
  9. 比率を取ると、0.2274です。VCX = 1 – 0.2274 = 0.7726を入力します。(終わり)

まとめ

このページでは、Zemaxコミュニティに投稿された「シーケンシャルモードで半導体レーザを設定する方法」を取り上げました。アポダイゼーションファクタを1にすると、強度ピークから13.5%以下の領域までしか考慮できません。1%まで考慮するには、発散角度とアポダイゼーションファクタを調整する必要があります。

<参考>

[1] OPTICS NOTES, https://laseristblog.blogspot.com/2011/04/gaussian-beam-apodization-in-zemax.html

[2] MOUSER, LD spec sheet, https://www.mouser.jp/datasheet/2/348/rld63npc800a010-e-1843492.pdf

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