こんにちは。光学、光でのお困りごとがありましたか?
光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。このページでは、半導体レーザ(LD: Laser Diode)をOpticStudioのノンシーケンシャルモードで設定するとき使用する、光源(ダイオード)の角度分布について説明します。
結論
- ノンシーケンシャルモードでレーザダイオード LD を設定する場合は、光源(ダイオード)が第一候補になります。
- ニアフィールド(Near Field、NFPという場合も, 近視野、空間分布)とファーフィールド(Far Field、 FFPという場合も、遠視野、角度分布)のガウス分布形状をそれぞれ設定できます。
- 典型的なガウス分布にする場合は、スーパーガウス係数を1にします。オブジェクトを選択したときのGxとGyのデフォルト設定が0.01なので要注意です。
このページの使い方
このページでは、Zemaxコミュニティに投稿され、光ラーニングでも取り上げた「レーザダイオードをシーケンシャルモードで設定する方法」の追加情報をお伝えします。
Zemaxコミュニティに投稿されたトピック中から、よく参照されているもの、コメントが多いもの、筆者が気になったものを取り上げて紹介します。よくある疑問や注目されているトピックについての情報を発信することで、何かしらの気づきとなれば幸いです。
OpticStudioで半導体レーザ(LD)光源を設定する方法
光ラーニングでは最近、半導体レーザ(レーザダイオード、LD)をシーケンシャルモードで設定する方法を紹介しました。非点隔差なし_シーケンシャルモードでレーザダイオード(LD)を設定する方法 (1) を参照してください。
このページでは、ノンシーケンシャルモードでLDに近い光源を設定する方法を説明します。使用するオブジェクトタイプは、光源(ダイオード)です。
ノンシーケンシャルモード: 光源(ダイオード) Source Diode
ノンシーケンシャルモードの光源オブジェクトの一つ、光源(ダイオード)は、角度分布と空間分布のそれぞれを独立してガウス分布を設定できます。
非常に汎用性が高く、適用できる場面の多い光源オブジェクトです。その反面、パラメータが多くて最初はどこにどの数値を入れればよいか迷ってしまうかもしれません。
このページでは、下図のパラメータのうち上半分のαx~Gy (Gxは誤植)が定義する、「角度分布」について説明します。下半分の空間分布については次のページ(作成中)で説明します。
光学用語: NFP(近視野)、FFP(遠視野)
光源の特性を説明するときの用語として、NFPとFFPを聞くことがあります。NFPはNear Field Patternの略で日本語だと近視野と言います。FFPはFar Field Patternの略で日本語だと遠視野と言います。Pがなくて、NF / FFという場合もあります。
NFPは発光エリアの空間的なエネルギー分布のことです。発光点に近いので、ニアフィールドです。光学系が発光エリアを結像する場合、NFPが像面に形成されるので、結像系で特に重要です。
FFPは光源から十分離れて、発光エリアの大きさが無視できるような状況での、角度的なエネルギー分布のことです。発光点から遠いので、ファーフィールドです。光源から十分離れた場所では、FFPとほぼ同じ分布形状で空間が照明されるので、照明系で特に重要です。”ほぼ”と言ったのは、角度分布は球面で測定されるためで、発散角度によっては平面の照明結果と違いが生じるで注意します。
角度分布 Angular Distribution
角度分布のことを、強度分布とも言います。照明系の単位は少し複雑なのですが、角度分布を強度分布と表現することは一般的です。ちなみに、空間分布のことは、照度分布と言います。筆者も気を付けるようにしていますが、光ラーニングの中でもごちゃごちゃに使ってしまっているかもしれません。
強度分布の式は以下の通りです。パラメータが多いので、一つ一つ確認していきます。
θxとθyは、光源オブジェクトのローカルZ軸に対するX方向とY方向の角度の大きさです。定義は、θxはXZ平面に投影された光線ベクトルのなす角度で、θyはYZ平面に投影された光線ベクトルです。単純に、X方向の開き角度とY方向の開き角度、と考えればOKです。
”投影された”というのが少し難しい概念かもしれませんが、3次元で見ると理解しやすくなります。下の図は、unity.comのHow can I find direction with known 2 projection angles on xz and yz planes? から引用しています[1]。3次元のベクトル u を影絵のように平面に写した像を見るイメージです。
αxとαyは、XZ平面上とYZ平面上でユーザが定義する発散角度を度数(°)単位で入力します。このとき、発散角度は、ガウス分布のピークから強度が1/e2になる半幅で入力します。
LDメーカが開示している発散角度は、ガウス分布に限らず、最大値に対して強度が半分になったときの全幅、いわゆる半値全幅で定義されます。そのため、市販LDの発散角度を光源(ダイオード)で設定する場合は、半値全幅を1/e2半幅に変換します。
変換式については、非点隔差なし_シーケンシャルモードでレーザダイオード(LD)を設定する方法 (1) を参照してください。結論、0.85倍にします。
これは筆者個人の考えですが、半値全幅の方が定義としての汎用性が高いです。1/e2半幅は、あくまで分布がガウス分布だった時にのみ有効な発散角度の指標です。発散角度、もしくは発光点の照度分布を対称系のガウス分布とみなせる光源の方が特殊ケースなので、より一般的に使用できる発散角度の定義方法が半値全幅なのは自然かと思います。
GxとGyはスーパーガウス係数で、ガウス分布を典型的な釣り鐘型の形状から、分布の”肩”の形状を変化させる効果があります。1より小さいときの尖った強度分布を見たことはないですが、1より大きい場合は高出力マルチモードLDの特性に少し似ているかもしれません。
理想的なガウス分布からズレた分布形状も定義できる点が、光源(ダイオード)の優れた点です。
強度分布を確認する方法 ディテクタ(矩形)とディテクタ(極)
設定した角度分布(強度分布)の妥当性は、常に私たち自身が確認する必要があります。角度分布を確認する方法は、大きく2つあります。
一つがディテクタ(矩形)で強度分布を表示する方法で、もう一つはディテクタ(極)を使用する方法です。
ディテクタ(矩形)の照度分布でも角度分布を大まかに確認できますが、ディテクタ形状が平面なので光線の入射角度が大きくなると角度分布との誤差が大きくなるため、推奨はされません。筆者としては、強度分布を解析するならディテクタ(極)がおすすめです。
デフォルト設定の落とし穴に注意
注意点として、スーパーガウス係数にはデフォルトで0.01が入力されます。これは、典型的なガウス分布ではありません。典型的なガウス分布とするには、GxとGy、OpticStudioのユーザインターフェイスではX-SuperGauss(Xスーパーガウス係数)とY-SuperGauss(Yスーパーガウス係数)を “1” に設定します。
まとめ
このページでは、最近光ラーニングで取り上げていた「シーケンシャルモードで半導体レーザを設定する方法」に関連して、ノンシーケンシャルモードで半導体レーザを設定するとき有用な、光源(ダイオード)を取り上げました。
今回は角度分布を中心に、スーパーガウス係数など各パラメータの意味について説明を加えました。次回は、残り半分の空間分布について確認します。
<参考>
[1] unity.com, https://answers.unity.com/questions/1513987/how-can-i-find-direction-with-known-2-projection-a.html
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