こんにちは。光学、光でのお困りごとがありましたか?
光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。このページでは、半導体レーザ(LD: Laser Diode)をOpticStudioのノンシーケンシャルモードで設定するとき使用する、光源(ダイオード)の空間分布について説明します。
結論
- ノンシーケンシャルモードでレーザダイオード LD を設定する場合は、光源(ダイオード)が第一候補になります。
- 光源(ダイオード)の空間分布には3種類のパラメータがあります。①矩形開口の大きさ W、②ガウス分布の大きさ s、③ハイパーガウス係数 H、です。
- 典型的なガウス分布にする場合は、スーパーガウス係数を1にします。オブジェクトを選択したときのGxとGyのデフォルト設定が0.01なので要注意です。
OpticStudioで半導体レーザ(LD)光源を設定する方法
光ラーニングでは最近、半導体レーザ(レーザダイオード、LD)をシーケンシャルモードで設定する方法を紹介しました。非点隔差なし_シーケンシャルモードでレーザダイオード(LD)を設定する方法 (1) を参照してください。
このページでは、ノンシーケンシャルモードでLDに近い光源を設定する方法を説明します。使用するオブジェクトタイプは、光源(ダイオード)です。
ノンシーケンシャルモード: 光源(ダイオード) Source Diode
ノンシーケンシャルモードの光源オブジェクトの一つ、光源(ダイオード)は、角度分布と空間分布のそれぞれを独立してガウス分布を設定できます。
非常に汎用性が高く、適用できる場面の多い光源オブジェクトです。その反面、パラメータが多くて最初はどこにどの数値を入れればよいか迷ってしまうかもしれません。
このページでは、下図のパラメータのうち上半分のαx~Gy (Gxは誤植)が定義する、「空間分布」について説明します。角度分布については、光源(ダイオード)の角度分布_ノンシーケンシャルモードでレーザダイオード(LD)を設定する方法 (1) を参照してください。
空間分布 Spacial Distribusion
空間分布のことを、照度分布もしくは放射照度分布とも言います。単位は「単位面積当たりのエネルギー (W/m2)」なので、いわゆるエネルギー密度です。前出の角度分布よりはイメージがつきやすいのではないでしょうか。
空間分布の定義式を確認します。角度分布にはなかった、Wx, Wyが条件式として追加されている以外は、分布形状を定義する式の形は角度分布とまったく同じです。
WxとWyは、光線が生成される領域を区切る矩形範囲です。ガウスビームの裾野をどこまで考慮するか、もしくは裾野を意図的に遮蔽することができます。注意点としては、OpticStudioは幾何光学のソフトウェアなので、矩形開口でビームを遮蔽してもエッジでの回折現象は考慮されず、光線がまっすぐ抜けていきます。
非点隔差を入力すると点光源になるので注意
角度分布よりも左側のパラメータで設定できる、非点隔差(Astigmatism)が0ではない場合、つまり「非点隔差がある」設定した空間分布は無視される点に注意してください。横方向と縦方向の発光点がズレた点光源になります。
LDのスペックシートを見て「えーと、非点隔差はこの数値を入力して、次にNFP(空間分布)をガウス分布で表現するとこのくらいのsx, syでいいんだな。」と入力しても、生成される光源には空間分布がなく、NFPはライン状の光源になります。
マルチモードLDみたいな光源を光源(ダイオード)で設定
これまで紹介してきた角度分布と空間分布をそれぞれ設定できる光源(ダイオード)は、スーパーガウス係数を使うことで、下図のようなマルチモードLDのような光源をモデル化できます。
空間分布のNFPはX方向に幅広で、シングルモードになるY軸方向は典型的なガウス分布にします。
角度分布のFFPは、回折の効果で幅広方向が逆転するので、それを考慮してY軸方向に長い楕円形状としています。マルチモードになるX軸方向は、スーパーガウス係数で分布形状を調整します。
実際には、マルチモード方向はピークが複数見える複雑な形状をしています。NFPについては、発光エリアに有限サイズを与えられるメリットはあります。FFPの複数ピークについては、もっと複雑なアプローチが必要になりますので、ここでは触れません。
もっとも、マルチモードのピークの立ち方はサンプルによって異なり、ピークが2つのサンプルもあれば3つのサンプルもあったりするので、あまり形状にこだわる必要はないのかもしれません。発散角自体はスペックシートに記載されているので、その数値は信頼できます。
このような光源設定の幅の広さは、ノンシーケンシャルモードの大きな利点になります。もしかしたら、他の方法でより現実に近いLDの設定方法があるかもしれませんが、まずは光源(ダイオード)が候補の一つになると思います。
まとめ
このページでは、最近光ラーニングで取り上げていた「シーケンシャルモードで半導体レーザを設定する方法」に関連して、ノンシーケンシャルモードで半導体レーザを設定するとき有用な、光源(ダイオード)を取り上げました。
前回の角度分布(FFP)に引き続き、今回は空間分布(NFP)の設定パラメータを取り上げ、マルチモードLDライクな光源モデルを設定する方法を説明しました。
コメント
初めてコメントさせて頂きます!
紹介した方法でマルチモードLDを作ってみました。図82-3のように、黒い軸上(ディテクタビューアでの「cross section row」と「cross section column」)青いとオレンジの曲線ができたけど、スーパーガウス係数を1以上に設定すれば、ビームの形状は円か楕円ではなく、四角になりました。
との問題について何か見解がれば幸いです。
コメントありがとうございます!あらためて、スーパーガウス係数を大きくしたとき、小さくしたときのビームの形状を確認しました。
おっしゃるとおり、スーパーガウス係数を1以上にするとビーム形状は四角に、逆に1以下にすると辺が中心に向けて湾曲したダイヤ形状になりました。
次に、ヘルプファイルに記載されている数式とビーム形状を確認したところ、ビーム形状がスーパーガウス係数で変化するのは数式の通りでした。
Zemaxのコミュニティポストで、これに関するディスカッションを発見しました。非常に長く、追いかけるのは大変かもしれませんが、参考になります。
https://community.zemax.com/got-a-question-7/source-diode-with-circular-aperture-295
最終的に質問者が満足する結論には達していないようでした。DLLの自作が提示されています。
1以外のスーパーガウス係数を入力したときにビームでも楕円ビームになる機能の要望も見られましたが、新たな数式が必要になります。
また、筆者が難しいと思ったのは、X方向とY方向で異なるスーパーガウス係数を入力した場合の2次元分布を楕円形状で表現する数式の導出です。
現在の数式は、簡易的な数式表現でX方向とY方向のスーパーガウス係数に別々の値が使用できるようにしてある印象です。
その代償として(?)、スーパーガウス係数を入力するとビームが楕円から視覚やダイヤ形状に変化してしまいます。
参考になりましたでしょうか?この係数の使い方はまだ検討の余地があると思いました。改めて、コメントありがとうございます!
※さらに踏み込んだ部分で疑問点をお持ちの場合は、正規のサポートかコミュニティをご使用いただくことをお勧めします(笑)!
ご返信いただい、ありがとうございました!
私にとって非常に貴重な知識です。