こんにちは。光学、光でのお困りごとがありましたか?
光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。このページでは、2022年3月に発表された光学関連のニュースを取り上げ、OpticStudioとのつながりや、筆者の個人的なコメントを加えます。参考にしているページは、オプトロニクスオンライン、Optics.org、Laser Focus Worldなどです。
UV、コロナ関連 2 件
ウシオ,抗ウイルス・除菌用光源を広配光化 (OPTRONICS)
東大ら,高出力深紫外LED開発しコロナ高速不活化 (OPTRONICS)
ウシオ電機は抗ウイルス・除菌用紫外線技術を「Care222」としてブランディングしています。222とは、222nmの光を扱うことを意味しているようです。詳細については、ウシオ電機のウェブページ を参照してください。
東京大学と情報通信研究機構の共同開発で、265nm帯の新紫外LEDが開発されました。出力は市販品の10倍の500mWとのこと。例えば、エーシックの265nmのLEDがちょうど50mW出力 (2021/9/6~9/10のニュース)でした。
自動車関連 2 件
DELO,AR-HUD向けUV接着剤を開発 (OPTRONICS)
東芝,手のひらサイズLiDARで300m測距に成功 (OPTRONICS)
今月はHUD (Head Up Display) のニュースがありました。といっても、HUDそのものではなくUV接着剤の開発情報で、ひとつのアプリケーション先が自動車用HUDのようです。自動車のフロントガラスにホログラムデバイスを張り付けるのに適した「DELO PHOTOBOND」を開発したとのこと。ホログラムを使用したARガラス用途にも使えそうです。筆者の経験では、シミュレーションで接着剤を含めて解析することは少ないですが、迷光の要因となる場合があります。硬化後、長期間使用時の変化などは気になるところでしょうか。
もちろん、LiDARの情報もありました。東芝らか解像度1200×84で、300mまでカバーするLiDARが発表されました。以前からの変更点は、レイアウトの工夫、高密度実装とのころ。光学的には折り返しを活用して光路長を確保したとのこと。軸外しの反射系でしょうか。アライメント調整は大変になりますが、体積の有効活用にはメリットが大きいです。投射システムはポリゴンミラーで、モータ制御技術が強みというのは、MEMS、ソリッドステート、回折など最近よく見るワードとは少し離れているようにも思います。2023年度の実用化と、ソリッドステートLiDARの開発も進めるとのこと。気になるのは、ポリゴン式LiDARが生き残れるか、その知見がソリッドステート式でいかに活用できるか、といったところでしょうか。
新製品関連 2 件
光貿易,スマートグラス向け超小型光源を発売 (OPTRONICS)
森精機,金属3Dプリンタのラボを設置 (OPTRONICS)
光貿易が取り扱い始めた、スイスExalos社のRGB3色LDチップは、以前は超小型の走査型レーザプロジェクタで待ち望まれたデバイスでした。いまは、その用途も拡大しているようです。今回のデバイスは、ファイバ合波でなくダイクロイックミラーを用いた空間合波型です。
DMG森精機の金属3Dプリンタのラボ設置も、急成長する市場への対応と見て取れます。三菱電機から金属レーザプリンタの発表がありましたし、世界的に見てもこの領域は注目されていそうです。三菱の時にもあったように、積層製造のコンサルティングや、プログラミングから仕上げ、情報セキュリティまでフルサポートできる体制で、ソリューションとして提供する意図がありそうです。
新製品、という枠とは少しずれているように思いましたが、ここにまとめました。
研究関連 3 件
東大,アクリル板と水で原子レベルの平坦化を実現 (OPTRONICS)
浜ホト,THzイメージインテンシファイアを開発 (OPTRONICS)
富士フイルム,構造色をインクジェットで印刷 (OPTRONICS)
今月、とくに面白いと思ったのが、東京大学の研磨技術です。原子レベルの平坦性を実現する方法が、アクリル板と水だけでガラスの表面を研磨する、というもの。ガラスに加えて、シリコン表面での同じ結果が得られるとのことで、これだけ聞けばまさに夢の技術です。欠点は(やはりというか)研磨速度が遅いことのようですが、どのくらい遅いのでしょうか。大幅に改善できるらしいので、産業への実用化を期待したいところです。
浜ホトのテラヘルツ画像をリアルタイムで取得する世界初の技術もインパクトが大きいと思いました。キーテクノロジーは光電変換用のメタマテリアルアンテナということで、詳しいことは分からないのですが、期待が膨らみます。OpticStudioでテラヘルツ領域の波長帯を解析しているエンジニアもいると思いますが、実機の進化が進むとシミュレーションへの需要も多くなっていきそうです。
筆者個人が好きなのが、富士フイルムの構造色インクジェットです。回折と干渉によって表面を発色させるもので、それをプリンタの技術の発展で実現したは大変興味深いです。OpticStudioユーザとして気になるのは、この反射面の特性はシミュレーションソフトに取り込めるものなのか?という点でしょうか。一般的な散乱式やBSDFファイルでは無理なのは確かです。ニュースには装飾関係のアプリケーションが多く挙げられていましたが、狙った波長、狙った方向への光制御ができるのであれば、産業用途への拡張が可能かもしれない、と妄想がはかどります。
デバイス関連 2 件
三菱電機,5G向けDFBレーザーを開発 (OPTRONICS)
日清紡マイクロ,光学式反射型センサを開発 (OPTRONICS)
光通信の伝送量に関するニュースが多い中で、1310nm帯のDFBレーザのサンプルリリース情報がありました。これら通信用途のデバイスが、LiDARなどセンサ系に採用されるようになるのでしょうか?ひとつひとつのセンサに、光通信レベルの伝送容量が求められる未来とは?
日清紡からはタッチレスボタンを志向した光学式反射センサ「Optton」のサンプルリリース情報がありました。検出範囲が50mmなので、物体から少し離れたところで反応する仕様です。面白いのは、センサ同士の干渉防止を、パルス変調で行っていることです。ということは、センサ同士は回路で接続されて同調する必要がありそうです。
まとめ
このページでは、2022年3月(30日まで)に発表された光学関連情報から、11件をピックアップしました。筆者の知識レベルで取り上げられるネタは制限されますが、これからも気になった情報をご紹介したいと思います。
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