[76] 光学ニュースピックアップ (2022年2月)

光学ニュースピックアップ

こんにちは。光学、光でのお困りごとがありましたか?

光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。このページでは、2022年2月に発表された光学関連のニュースを取り上げ、OpticStudioとのつながりや、筆者の個人的なコメントを加えます。参考にしているページは、オプトロニクスオンライン、Optics.org、Laser Focus Worldなどです。

研究関連 5 件

パナソニック, 遠赤外非球面レンズのモールド量産技術確立 (OPTRONICS)

ソニーコンピュータサイエンス研究所ら, 低軌道環境で光通信データ転送に成功 (OPTRONICS)

NICTら, 多人数裸眼3Dディスプレーシステムを開発 (OPTRONICS)

NHK技研, 考案した色域の表現方法が国際標準化 (OPTRONICS)

Tunable metalens offers route to portable medical diagnostics (optics.rig)

多種多様な研究開発情報が発表されました。

センサ用途の赤外、除菌用途の紫外のニュースは必ず発表されますが、今回は光源ではなくパナソニックから発表されたカルコゲナイドガラスのモールド技術は興味深いところ。非球面どころか回折レンズにも対応可能とのことで、設計者の選択肢が広いのも魅力的です。典型的なガラス特性データを探すと、やはり SCHOTT様 (赤外線材料の紹介ページ) になるでしょうか。OpticStudioのSHOTT_IRG.AGFにガラスデータがあります。

ソニーの低軌道環境の光通信は、光空間通信で接続が不安定な状態でも安定したデータ送受信を行う通信技術の実証です。この分野は、Amazon、SpaceXの動向が中心となっているような気がしますが、果たして日本企業の入り込むスキがあるか注目です。

NHK技研の色域表現手法 Gamut Rings (ガマットリングス)は、長く研究されていたように記憶しています。これまで見慣れた馬蹄形の色表現方法から新しい表現方法に変わるのは興味深いです。

図 76-1 NHK技研が開発したGumat Rings。Ringsは切り株の年輪のように見えることから。NHK技研のプレスリリースより引用

新製品関連 4 件

日本アビオニクス, 組込用サーモカメラモジュールを販売 (OPTRONICS)

三井化学, アスカネットら, 非接触POSレジの実証実験を開始 (OPTRONICS)

ニコンら, AI活用の眼底カメラ用プログラム開発 (OPTRONICS)

Mitsubishi Electric to launch digital wire-laser metal 3D printer (optics.org)

非接触POSレジは、アスカネットが開発していた空中ディスプレーの典型的な活用例として長く注目されていました。コロナの影響で、タッチディスプレイの非接触化が一気に注目度が高まったのかもしれません。映像を再結像するプレートと親和性の高いディスプレイや、触った感じをユーザに与えるハプティックな技術が必要になるように思います。

医療分野、特に画像診断に対するAIの有効性はよく聞くトピックでした。ニコンソリューションズの「RetinaStation」が取得した画像をDeepEeyVisionの「逸脱可視化AI」がチェックします。他の画像診断との親和性も高いのでしょうか?測定器の進化の方向性に、「AI技術が活用しやすい」という軸が加わるのかもしれません。

三菱電機の金属3DプリンターAZ600は、5軸の空間制御と加工条件の協調制御を同時に組み合わせたとのことです。製品だけでなく、コンサルティングやプロトタイプ支援まで提供するということで、この分野でもソリューション売りへの変革が進んでいるようです。

自動車関連 2 件

ams OSRAMのレーザ, CeptonのLiDARに採用 (OPTRONICS)

Aeva launches ‘first’ 4D lidar with camera-level clarity (optics.org)

最近の自動車関連ニュースの大半はLiDARが占めているようです。自動車関連以外にカテゴライズしたニュースにも自動車用途、特にAD/ADASをアプリケーションに想定したものが多いです。

CeptonのLiDARに採用されたOSRAMのレーザは、905nmの端面発光レーザです。905nm vs 1550nm、端面LD vs VCSELなど、デバイスや測距方式(ToF, FMCW, さらに高度な方式?)の取捨選択に注目です。

Aevaは、4D LiDARセンサとしてAeries IIを発売しました。3次元空間に加えて、そのポイントの移動速度が4つ目の検出対象です。この移動速度の検出がLiDARとしての性能を上げているようで、カメラレベルの超解像、最大500mの作動距離を実現するとのことです。AevaのAeries IIを紹介するページでは、魅力的な動画を見ることができます。

デバイス関連 3 件

スタンレー, MEMSスターターキットを発売 (OPTRONICS)

マグネスケール, LDの自社開発と内製化に工場新設 (OPTRONICS)

SteraVision, 世界初ソリッドステートLiDAR開発 (OPTRONICS)

1枚のミラーで2軸走査するMEMSミラーは、Microvisionなどが先行して製品化していました。レーザを変調しながらスポットをスクリーン上を走査することで映像を表示します。レーザ安全規格の制約でこのタイプのレーザプロジェクタは明るさを出せないのが難点でした。アプリケーション次第といったところで、有力なのはMicrovisionも訴求している車載のHUDでしょうか。

DMG MORIとマグネスケールは、30億円を投じて計測用半導体レーザの開発拠点を新設します。外部から調達してくるより、より自分たちのアプリケーションとの親和性の高い光源を開発することで、他社との差別化が図れそうです。パッケージにも工夫があったりすると面白いような気がします。

SteraVisionのソリッドステートLiDARは、NEDOの「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」の一部として取り組まれており、可動部ゼロのスキャナー MultiPolとして開発されました。液晶と光の偏光方向の高速スイッチングで実現しており、光のスキャンというよりパターンの照射位置を高速に切り替えるイメージでしょうか。さらに、ToFではなくFMCWを採用しており、自動運転やFA適用を強く意識しています。

その他

サイバネットシステム, Zemax製品の販売を開始

もともとCodeV、LightToolsなどを取り扱っていた代理店サイバネットシステムが、Ansysに買収されたZemaxの製品群の販売を開始しました。CodeVとLightToolsはOpticStudioの直接的なコンペチタだったので、どのような販売戦略がとられるのか注目です。

Ansysからの直接販売との差別化ポイントなどはあるのでしょうか。以前からサイバネットシステムが提供していた光学関連の情報発信がこれからも継続されることは、光学エンジニアにとってもうれしいことです。

まとめ

このページでは、2022年2月(27日まで)に発表された光学関連情報から、15件をピックアップしました。筆者の知識レベルで取り上げられるネタは制限されますが、これからも気になった情報をご紹介したいと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました