[29] OpticStudio 21.3 リリース、新機能レビュー

OpticStudio

こんにちは。光学、光でのお困りごとがありましたか?

光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。2021年9月21日にZemaxソフトウェア一式(OpticStudio、OpticsBuilder、OpticsViewer)の新バージョン21.3がリリースされました。日本語サイトのブログページ もあります。このページでは、OpticStudioをメインに新機能をレビューします。

リリースノートもインターネットで公開

“OpticStudio 21.3″などでキーワード検索するとリリース関連の情報が見つかります。その中にリリースノートの検索結果もありました。以前は、PDFでダウンロードしていたので、こちらもインターネット公開になったようです。一方で、ZemaxのCommunityサイトからリリースノートのページに行くリンクが見当たらないような??探し方の問題かもしれません。念のため、OpticStudio 21.3の日本語版のリリースノートへのリンクはこちら になります。

OpticStudio 21.3 新機能

ここからはリリースノートを情報源に、OpticStudioの追加モジュールとなるSTARの追加機能とOpticsBuilderの機能は割愛して、OpticStudioの新機能についてレビューします。筆者個人の主観が入っているのであくまで参考までとして、詳細は必ず公式サイトの参照をお願いします。

ノンシーケンシャルモードの軸外しミラーオブジェクト

ノンシーケンシャルモードに新規オブジェクト、軸外しミラー(Off-axis Mirror)が追加されました。このオブジェクトはシーケンシャルモードの面(軸外しコーニック自由曲面(Off-axis Conic Freeform))の機能の一部を削除したオブジェクトタイプです。

OpticStudioは結像系のシーケンシャルモードと照明系のノンシーケンシャルモードを両方取り扱えるソフトウェアですが、両モード間で使用できる面とオブジェクトの互換性は完全ではありません。そのため、シーケンシャルのデータをノンシーケンシャルに変換する場合、対応するオブジェクトがない場合は変換エラーとなるか、代替オブジェクトもしくはグリッド形式の力技で変換されます。この新機能は、そのギャップを埋めるものとなります。シーケンシャル>ノンシーケンシャルについては完全互換が理想ですので、今後に期待です。

関連ファイルを一か所で管理するプロジェクトディレクトリ

OpticStudioが光学データを取り扱うのに使用している関連ファイルを一か所に集約し、自動保存によって関連ファイルのバージョンを保つ新機能です。

これまでのOpticStudioのファイルは、特定のディレクトリに.zmxファイルと.zdaファイルが保存されていました(ZDAと解析機能_OpticStudioのシーケンシャルモードについて (5 fin))。OpticStudioは他にも様々な外部ファイルを参照して光学系を設定しています。例えば、ガラスデータやCADオブジェクトなどです。これらのファイルは、ドキュメントフォルダ直下にあるZemaxフォルダ以下に、分散して保存されていました。この新機能は、それらの関連ファイルを一か所(有力なのは.zmxファイルと.zdaファイルと同じ場所)に保存することで、「この光学特性を記述したオリジナルのファイルはどこだっけ?」というあるある状況を解消するものです。

.zmxファイルに変わる新デフォルトファイル形式 .zosファイル

今回のリリースで一番大きな変更点だろうと思います。OpticStudioの設計ファイルのフォーマットがこれまでの.zmxから.zosになり、バイナリ形式に変更されました。これまでの.zmxファイルは人が読んで理解できるテキストフォーマットだったことから、セキュリティ面も改善されています。

古いOpticStudio、旧ZEMAXユーザにとっては、ファイル形式の更新は怖いものです。新しいバージョンで作成されたファイルがより古いバージョンで開けなくなるのは、いろいろと困るからです。「前方互換(新機能が無理なのは当然として、新バージョンで保存されたファイルを旧バージョンで開けること)を許可していないCAEソフトウェアは多い」という大きな潮流は理解しながらも、いちユーザの立場だと「だからOpticStudioがそうなっても仕方ないよね、納得!」とは受け入れるのは難しいものです。

リリースノートには「後方互換(旧バージョンで作った.zmxファイルを21.3以降の新バージョンで開けること)は約束する」とありますが、前方互換(新バージョンで.zmxファイルが作成できること、またその.zmxファイルが旧バージョンで開けること)には言及していません。Zemaxのウェブページでは、過去2年分のインストーラしかダウンロードできないので、ここ最近のインストーラを手元に保存して持っておくなど、保険をかけておくのが賢明かもしれません。

クラウドコンピューティング対応のOpticStudio HPCベータプログラム

正式機能としてのリリース前の状態で搭載された、High Performance Computing (HPC)です。ベータプログラムに参加している特別なユーザしかアクセスできない機能です。「新機能の試行」に近い位置づけでしょうか。

機能、サービスの全体図がよく見えませんが、クラウド環境の分散リソースを活用してOpticStudioの計算速度を向上させる機能のようです。特定の機能が言及されているので、すべての機能がクラウドコンピューティングに対応してはいないようです。ローカルで複数のOpticStudioを同時に走らせるのと比較して、どちらが高速で有意な結果を出すのかが気になります。例えば、モンテカルロで100万サンプルを実行する場合、HPCで100万サンプル計算 vs ローカルのワークステーション4台で25万サンプル計算 での比較など。HPCのスケーリングがどの程度(5倍?10倍?100倍?)なのか、注目です。

公差解析機能拡張に対応したZPLマクロTOLERANCEキーワードの更新

珍しいZPLマクロの更新です。最近のバージョンアップで追加された、公差解析機能で出力されるZTDファイルを保存できるように更新されました。

ZTDファイルには、公差解析実行中に出力される計算結果のすべてが保存されます。例えば、以前は保存されなかったモンテカルロ一つ一つの変動パラメータ、評価基準の数値、コンペンセータの数値です。2019年ごろからこれらを保持するZTDファイルを保存する機能が追加されたことを受けて、ZPLマクロのキーワードも対応したようです。今回の新機能に限らず、マクロが新機能をサポートするように改善されることは、マクロを愛用しているベテランユーザにはうれしいことです。過去のマクロ資産に少し手を加えることでOpticStudioの新機能のエッセンスを取り入れられるのは心強いです。

まとめ

2021年9月21日にリリースされたZemaxソフトウェアの最新バージョンから、OpticStudio 21.3の新機能をレビューしました。自分には関係なさそうな機能でも、光学業界のトレンドを感じる意味でも、いろいろと眺めてみると興味深いです。ファイル形式の互換性など、少し心に引っかかる部分もあるものの、今後の進化にも期待したいと思います。以上、参考になれば幸いです。

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