[74] 近軸 vs 実光線_レイエイミングの使い方 (3)

OpticStudio

こんにちは。光学、光でのお困りごとがありましたか?

光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。 このページでは、OpticStudioのクセあり機能、レイエイミングに存在する「近軸」と「実光線」の違いについて説明します。

結論

  • 近軸レイエイミングは、満たしたい絞り面の大きさを近軸マージナル光線で決定します。近軸絞り面を満たすために、システムエクスプローラで入力したアパチャー値が調整されます。
  • 実光線レイエイミングは、満たしたい絞り面の大きさを軸上の実マージナル光線で決定します。軸上視野で決まる実絞り面を満たすために、軸外視野でシステムエクスプローラで入力したアパチャー値が調整されます。
  • アパチャータイプを絞り面半径による定義 (Float By Stop Size)にすると、近軸絞り面と実絞り面が一致するので、近軸レイエイミングと実光線レイエイミングの結果は同じになります。

このページの使い方

このページで参考にした技術記事(ナレッジベース)は、レイエイミングの使用法 です。この記事は、OpticStudioで広角レンズや軸外し系を設計するときに使用する、レイエイミングの使い方の概要を紹介しています。

このページでは、ナレッジベースで使われている光学用語、技術用語、前提知識について、もう一歩踏み込んだ説明を加えていきます。ナレッジベースの長さは記事によってまちまちなので、いくつかのブロックに分けて注釈を加えています。この記事は3番目です。1番目は、レイエイミングがオフの場合_レイエイミングの使い方 (1) です。2番目は、瞳収差ってなに?_レイエイミングの使い方 (2) です。

2つのレイエイミング

瞳収差が大きなことが判明したり、入射瞳が軸外にある光学系だったりして、レイエイミングが必要になったとします。このとき困るのが、「近軸」と「実光線」のオプションがあることです。どちらを使えばよいのか、それぞれがどのように光線を生成するのか、わからなくなってしまいがちです。

近軸マージナル光線 or 実光線マージナル光線

まず明らかにしておきたいのが、近軸、実光線が何を指しているかです。それは、マージナル光線です。レイエイミングで適切な光線を探索するとは、実絞りを光線が満たすようにすることです。

ざっくりと言えば、それは適切なマージナル光線を選び出すことと等しいです。絞りを満たすマージナル光線を選択するのに、近軸光線追跡を用いるか、実光線追跡を用いるかが、レイエイミングの近軸・実光線の違いになります

マージナル光線については、主光線、マージナル光線_OpticStudioレイアウトでの瞳の表示 (2) を参照してください。

図 74-1 マージナル光線。軸上の視野から瞳のエッジを通る光線。

絞りを満たすには、絞りの大きさが必要

次に明らかにしておきたいのが、「絞りを満たす」には絞りの大きさを決める必要があることです。近軸にしろ実光線にしろ、「絞り面でのマージナル光線の高さ=絞りの半径」にするのがレイエイミングの目的だからです。

絞りの大きさを決められれば、絞りの中を適切にサンプリングするように=瞳収差が瞳座標全体にわたってゼロになるように、光線座標や角度が調整されます。

瞳座標については、正規化(視野, 瞳)座標_シングレットレンズの設計(OpticStudio入門) (7) を参照してください。

実絞りの大きさの曖昧さ

光学系の絞りの大きさは、かなりの自由度で私たちが決められます。光学系に入射する光の大きさ=マージナル光線を決定するのは、システムエクスプローラのアパチャーです。もっとも直接的なのは絞り面半径を直接レンズデータエディタで設定する「絞り面半径による定義」です。

しかし、その他のアパチャータイプは、絞り面の半径を私たちの設定したアパチャー値から算出します。例えば、入射瞳直径では、近軸入射瞳の大きさを値として入力し、絞り面より前の光学系の結像倍率から絞り面の半径が計算されます。

アパチャータイプについては、アパチャー(システムエクスプローラ)_シングレットレンズの設計(OpticStudio入門) (1) を参照してください。

図 74-2 像空間Fナンバーから絞り径を求めるプロセス。収差があると、近軸絞りと実絞りは大きさが異なる。

レイエイミングオフ (OFF)

物体は無限遠、実絞りが光学系内部にあり、アパチャータイプが入射瞳径で定義されている光学系を例に、レイエイミングオフ、近軸および実光線レイエイミングの効果を、軸上と軸外で比較します。

まずデフォルトのレイエイミングオフです。光学系に入射する平行光の直径は、アパチャー値になります。絞り面では、近軸マージナル光線(近軸絞り)と実光線マージナル光線が一致しません。このズレが瞳収差で、絞り面より前の光学系の不完全さによって生じています。

図 74-3 レイエイミングオフ(デフォルト)。光線が近軸実絞りを満たせていない(瞳収差がある)。

近軸レイエイミング (Paraxial Ray Aiming)

次に、近軸レイエイミングです。上で述べた通り、近軸レイエイミングは、「近軸マージナル光線」で満たしたい絞りの大きさを決めて、実光線を生成します。そのため、光学系に入射する平行光の直径をアパチャー値から変化させることで、絞り面の実マージナル光線が近軸絞りのエッジを通るように光線が探索されます。

図 74-4 近軸レイエイミング。どの視野からも、近軸絞りを満たすようにアパチャー値が調整される。

実光線レイエイミング (Real Ray Aiming)

最後に、実光線レイエイミングです。実光線レイエイミングは、絞り面の大きさを軸上視野の実マージナル光線で決めます。そのため、軸上視野から光学系に入射する平行光は、システムエクスプローラで設定したアパチャー値になります。軸上の光線を見ると、レイエイミングオフと同じように見えます。

一方で、軸外視野からの光線はレイエイミングオフとは異なり、軸上のマージナル光線で決まる実絞りを満たすように光線が生成されます。そのため、アパチャー値で設定した値と異なる大きさの平行光が入射します。

図 74-5 実光線レイエイミング。実マージナル光線で決まる絞りを満たすように軸外のアパチャー値が調整される。

アパチャータイプ「絞り面半径による定義」がおすすめ

以上、近軸レイエイミングと実光線レイエイミングの違いを説明しました。2つのレイエイミングの違いは、実絞りの半径を決定する光線の違いでした。2つのレイエイミングで生成される光線が異なるのは、近軸と実光線で絞り面の大きさがふらついてしまうのが原因でした。

アパチャータイプを絞り径による定義を、絞りの大きさを直接指定する「絞り面半径による定義」にすれば、近軸光線追跡も実光線追跡も、絞り面では同じ座標に到達するので、2つのレイエイミングの結果は同じになります。

設計のプロセスによっては、アパチャータイプを「絞り面半径による定義」以外にする必要があると思います。それでもレイエイミングが必要となった場合は、OpticStudioが満たそうとしている絞り面がどう設定されているか、参考にしながら機能を使ってみてください。

まとめ

ここでは、Zemaxのホームページからアクセスできる公開記事、レイエイミングの使用法 から、近軸レイエイミングと実光線レイエイミングの違いについて説明しました。

実光線レイエイミングは実マージナル光線で絞り径を決定する必要がある分、近軸レイエイミングより2~8倍の計算時間がかかるとのことです。このページの説明で、より効率的なレイエイミングの運用につながりますと幸いです。

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