[78] アポダイゼーションでガウスビーム_Zemaxコミュニティ注目トピック (18)

OpticStudio

こんにちは。光学、光でのお困りごとがありましたか?

光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。このページでは、Zemaxコミュニティで注目されていた、アポダイゼーション機能を使用してガウスビームを定義する方法について説明します。

Zemaxコミュニティについては、こちらのページ で概略を説明しています。

結論

  • アポダイゼーションファクタは、アポダイゼーションタイプがガウシアンの時だけ使用するパラメータです。OpticStudioの定義式は「振幅」で記述されているので要注意です。強度分布は2乗で得られます。
  • アポダイゼーションファクタは、入射瞳内部のガウス分布の大きさを調整するパラメータです。1のときに入射瞳端での強度がピークの1/e2になります。
  • アポダイゼーションファクタは大きくしすぎると計算精度が低下するので、最大で4.0までにします。

このページの使い方

このページでは、Zemaxコミュニティに投稿されたトピック中から、よく参照されているもの、コメントが多いもの、筆者が気になったものを取り上げて紹介します。よくある疑問や注目されているトピックについての情報を発信することで、何かしらの気づきとなれば幸いです。

アポダイゼーションファクタでガウスビーム

トピックへのリンク:

アポダイゼーションファクタ

OpticStudioのシーケンシャルモードでは、レーザビームのもっとも基本的なモードのガウスビームを定義できます。システムエクスプローラのアパチャーにアポダイゼーションタイプ(Apodization Type)というオプションがあるので、これをガウシアン(Gaussian)にします。

アパチャーの設定については、アパチャー(システムエクスプローラ)_シングレットレンズの設計(OpticStudio入門) (1) を参照してください。アポダイゼーションについても触れています。

図 78-1 アポダイゼーションタイプ: ガウシアン、アポダイゼーションファクタ: 1の時のエネルギー分布

アポダイゼーションファクタの定義

アポダイゼーションファクタは、アポダイゼーションタイプがガウシアンの時だけ必要になるパラメータです。数値を1にした時、上の図のように、入射瞳端で照度がピークから1/e2=0.1353に低下する釣り鐘型の照度プロファイルになります。エドモンドオプティクスの技術資料、ガウシアンビームの伝播 も参考になります[1]。

アポダイゼーションファクタを変化させると、入射瞳内を占めるガウス分布の幅、つまりビーム径が変化します。アポダイゼーションファクタは、ガウス分布の低下の急峻さを調整するパラメータとも言えます。数値が大きいほど、入射瞳の中心から離れるにつれて一気に値が小さくなります。

以下の数式で、入射瞳内のビーム振幅の分布が定義されます。Gがアポダイゼーションファクタです。

注意点は、Aは「振幅」ということです。「強度」は振幅の2乗に比例するので、数式から得られるガウス分布の「振幅を2乗して、得られる強度」を考える必要があります

例えば、アポダイゼーションファクタが1のとき、入射瞳端での振幅は1/e=0.368ですが、強度にするときは2乗することで0.135が得られます。

なお、Aは正規化された振幅で、分布のピークとなる入射瞳の中心の振幅の大きさを1にします。ρは正規化半径です。正規化半径はOpticStudioの様々な機能で使用される重要な概念となります。正規化半径については、正規化半径(Normalization Radius)ってなに? を参照してください。

図 78-2 正規化半径の説明。拡張非球面を例に挙げている。

アポダイゼーションファクタによるガウス分布幅の変化

フォーラムの回答で共有されたリンクから、アポダイゼーションファクタとガウス分布の幅の関係性を分かりやすく説明したページへ行けます[2]。

まず、振幅を定義した式を強度の式に変換します。2乗を取るだけです。

この式の意味するところは、入射瞳半径=√G x (1/e2になる半径) です(リンク先には「式から容易にわかる」とありますが、筆者はちょっと。。。)。

入射するビームの大きさと、光学系の大きさ(入射瞳径)が決まっているとします。アポダイゼーションファクタを使って、入射瞳に対するビームの大きさを設定できます。

例えば、半径5mmのシングレットレンズに、1/e2半径2mmのガウスビームが入射する光学系を考えます。アパチャータイプを入射瞳直径で10mm、アポダイゼーションファクタは式に従って (5/2)2=6.25 にします。これで、シングレットレンズ全体に1/e2半径2mmのガウスビームが入射する条件を解析できます。

図 78-3 アパチャーサイズとアポダイゼーションファクタで決まる、1/e2のガウスビーム径の関係

アポダイゼーションファクタの別の捉え方

フォーラムの回答には、アポダイゼーションファクタのもう一つの考え方が紹介されていました。別の見方を聞くと理解が深まるので取り上げます。

アポダイゼーションファクタは、「入射瞳の端っこを1.0としたとき、強度が1/e2になる半径距離(rho)がどこになるか」を決めるパラメータと言えます。数式だと以下になります。

rhoは正規化瞳座標の半径方向です。例えば、上のアポダイゼーションファクタ 6.25が分かっているとき、rho=1/(√6.5)=0.4です。この 0.4 は正規化半径座標なので、入射瞳半径が5mmの場合は5 x 0.4 = 2mmとなって、確かに半径5mmのレンズに1/e2半径2mmのガウスビームが入射していることを表しました。

アポダイゼーションファクタは4.0以下での使用を推奨

上の例ではアポダイゼーションファクタ 6.25 を使っていましたが、ヘルプファイルにはアポダイゼーションファクタは4.0よりも大きな値にすることを推奨していません。理由は入射瞳を満たす光線のサンプリング方法にあります。

例えば、解析機能の一つのスポットダイアグラムは、同じエネルギーを持った光線群を使用します。そのため、ガウス分布の裾野領域では光線がほとんど生成されなくなります。この結果から得られるスポットサイズは、信頼性が高いとは言えません。

まとめ

このページでは、Zemaxコミュニティに投稿された「アポダイゼーションファクタ」を取り上げました。OpticStudioのシーケンシャルモードでガウスビームを設定する際に、入射瞳内でのガウス分布の幅を決定する重要なパラメータです。

ついガウス分布の裾野まで含めて解析したくなりますが、大きくても4.0とすることに注意しましょう。アポダイゼーションファクタをうまく使って、レーザダイオード(LD、半導体レーザとも)のような発散するガウスビームも設定できます。これについては、光ラーニングでも取り上げたいと思います。

<参考>

[1] エドモンドオプティクス, https://www.edmundoptics.jp/knowledge-center/application-notes/lasers/gaussian-beam-propagation/

[2] OPTICS NOTES, https://laseristblog.blogspot.com/2011/04/gaussian-beam-apodization-in-zemax.html

コメント

タイトルとURLをコピーしました