[19] 主光線、マージナル光線_OpticStudioレイアウトでの瞳の表示 (2)

OpticStudio

こんにちは。光学、光でのお困りごとがありましたか?

光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。 このページでは、光学を始めたときに必ず見聞きする、「主光線」と「マージナル光線」について説明します。

結論

  • 主光線は、特定の視野点から、入射瞳の中心を通って像面に到達する光線で、システムエクスプローラの「視野」によって定義されます。光学系が取り込む物体の大きさを決めます。
  • マージナル光線は、物体の中心から、入射瞳のエッジを通って像面に到達する光線で、システムエクスプローラの「アパチャー」によって定義されます。光学系が取り込む光の大きさを決めます。

このページの使い方

このページで参考にした技術記事(ナレッジベース)は Display pupils on a layout plot (英語) で、2番目の記事になります。1番目の記事は、こちら (絞り、入射瞳、射出瞳とは?) になります。

光学系を学習していると、割と序盤に「主光線」というワードが出てきます。光学シミュレーションソフトウェアにとっては一番大事な光線です。「マージナル光線」は主光線と同じ時に出てきて、これもまた大事な光線です。このページでは、この2種類の光線について説明します。

主光線 (Chief ray)、マージナル光線 (Marginal ray) の定義

主光線の説明をいくつかのサイトで拾ってみました。

  • 開口絞り(絞り面参照)の中心を通過する光線を指します。通常、画角を持った光束の中心を通過する光線であり(ビネッティングがある場合は除きます)、その画角の収差を計算する基準光線となります。[1]
  • 光学系の軸外の物点から出て開口絞りの中心を通る光線のこと。※開口絞りを小さくしたとき最後に残る光線であり、これをもって光線束を代表させ、各種の収差を求める。[2]
  • 主光線のそもそも定義は、「光学系の各像高物点から出て、開口絞りの中心を通る光線のこと」と規定されます。[3]

次に、マージナル光線の説明を探してみました。日本語の「マージナル光線 定義」で検索しても、主光線のようには出てこなかったです。その中で、以下のような説明を発見しました。

  • 光軸外の物点から出て、光学系の入射瞳の周辺部分を通る光線。[4]
  • 焦点に集まる光束のうち,一番外側の光線 (周辺光線 marginal ray) [5]

英語まで検索範囲を広げると、主光線とマージナル光線について、とても明確な用語説明をしているSPIEの説明ページがありました[6]。曰く、「物面の中心からレンズのもっとも外側を通過する光線がマージナル光線として知られ、軸外の物面から絞りの中心を通過する光線が主光線として知られる。」とあります。他にも、主光線を物体の一番外側から絞りの中心、と限定している場合もありました。

図 18-1 おそらく最も明確に主光線とマージナル光線を定義づけた図。

ガチゴチに厳密な定義があるわけではないようで、軸上 or 軸外、瞳 or 絞りで多少の用語の揺らぎがありました。どの説明が正しいというよりは、参照している情報が、どういう意味で主光線やマージナル光線という用語を使っているかを理解することが重要になります。

OpticStudioの主光線

光ラーニングでは、Zemax OpticStudioを土台として議論や説明を進めることが多いので、主光線とマージナル光線の定義も確認します。

OpticStudioの主光線は、「特定の視野点から、入射瞳の中心を通って像面に到達する光線」と定義されています。視野点とは、物面からサンプリングした1点のことです。この説明から、光軸上も含めた物面の任意の点で主光線は定義できて、物理的な開口絞りではなくて、光学系の実効的な入口である入射瞳の中心に向けて出射される光線であることが分かりました。

図 18-2 OpticStudioの主光線。視野点の場所ごとに主光線が定義できる。入射瞳の中心に向けて出射される。

しかし、この前提の定義に対して、いろいろな注釈がつきます。「ビネッティングファクタを使用している場合は、主光線は絞りの中を通らない」とか、「レイエイミングが有効ならビネッティングのある絞りの中心を主光線が通る」とか。新しく出てきた用語については、光ラーニングでも説明していきたいと思います。ビネッティングファクタについて、ビネッティングファクタの効果_ビネッティングファクタの使い方 (2) を参照してください。レイエイミングについては、近軸 vs 実光線_レイエイミングの使い方 (3) を参照してください。

OpticStudioのマージナル光線

OpticStudioのマージナル光線は、「物体の中心から、入射瞳のエッジを通って像面に到達する光線」と定義されます。主光線とは異なり、視野点が物体の中心に限定されていました。筆者自身、この点は曖昧に使っていて、軸外から入射瞳のエッジに向かう光線もマージナル光線と呼ぶこともあります。注意が必要かもしれません。あらためて確認して勉強になりました。

図 18-3 OpticStudioのマージナル光線。軸上の物体から出射する最外光線。広義には瞳のエッジをなぞる光線すべてがマージナル光線。

主光線と同様、ビネッティングがある場合の注釈がつきます。ビネッティングファクタによって瞳形状が楕円になっている場合、その楕円上を通過する光線がマージナル光線になります。

OpticStudioで主光線とマージナル光線を定義する、とは?

光学設計に置いて重要な光線である主光線とマージナル光線。OpticStudioではどの機能と紐づいているでしょうか。それは、画面左側のシステムエクスプローラです。Zeamxの技術記事としては、入門ガイド 1.3: システム エクスプローラ が参考になるかもしれません。下の図はこの記事から引用しています。結論から言えば、マージナル光線は「アパチャー」で定義して、主光線は「視野」で定義します。

図 18-4 アパチャーでマージナル光線を、視野で主光線を定義する。この2種類の光線で光学系の大枠が定義づけられる。

「アパチャー」は点光源から出た光のうち、光学系が取り込む大きさを設定するもので、光学系のエッジを通過する光線 (図18-3の緑色の光線) を定義するためのパラメータです。「視野」は観察対象とする物体の大きさを設定するもので、視野を増やすことは主光線 (図18-2の赤色の光線) を増やすことに相当します。

マージナル光線と主光線を決める方法は、それぞれいくかの手段があります。それが、「アパチャータイプ(入射瞳径、物側NA etc)」と「視野タイプ(角度、実像高 etc)」の選択肢です。目指す光学系に応じて私たちが選択する必要があって複雑に感じますが、最終的には「アパチャーはマージナル光線を」「視野は主光線を」それぞれ定義するためのパラメータである、と考えると少し見通しがよくなるかもしれません。

システムエクスプローラのアパチャーと視野の設定については、アパチャー(システムエクスプローラ)_シングレットレンズの設計(OpticStudio入門) (1) 視野(システムエクスプローラ)_シングレットレンズの設計(OpticStudio入門) (2) も参照してください。近軸計算についても、光ラーニングで取り上げたいと思います。

まとめ

ここでは、Zemaxのホームページからアクセスできる公開記事、Display pupils on a layout plot (英語) から「主光線」を取り上げ、関連する「マージナル光線」と併せて説明しました。光学系を特徴づける光線で、OpticStudioのシステムエクスプローラで設定します。 今後は、引き続き「Display pupils on a layout plot」から用語をピックアップして説明します。

<参考>

[1] サイバネット, https://www.cybernet.co.jp/optical/course/word/s09.html

[2] ウシオ電機, https://www.ushio.co.jp/jp/technology/glossary/glossary_sa/principal_ray.html

[3] EORIC, 主光線に関する解説ページ

[4] 武蔵オプティカルシステム, 周辺光線に関する解説ページ

[5] 東京大学の講義資料, 黒田先生, http://qopt.iis.u-tokyo.ac.jp/optics/3lensU_A4.pdf

[6] SPIE, Marginal and Chief Rays, https://spie.org/publications/pm92_161_marginal_chief_rays?SSO=1

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