[65] 正規化半径(Normalization Radius)ってなに?

OpticStudio

こんにちは。光学、光でのお困りごとがありましたか?

光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。 このページでは、Zemaxホームページで公開されている技術記事、What is the normalization radius (Zemax技術記事、英語) を取り上げ、「正規化半径」の意味と使い方を説明します。

結論

  • 正規化半径の設定に困ったら、とりあえず開口半径と同じ値にしておくと良いです。
  • 拡張非球面の正規化半径を1とすれば、偶数次非球面と同じ式になります。
  • 正規化半径の恩恵は、非球面係数のオーダーの差が小さくなることと、面のスケーリングと係数のスケーリングの関係が直観的になることです。

このページの使い方

技術記事(ナレッジベース)は、OpticStudioを深く知るうえで非常に有用ですが、有用な記事ほど長くなってしまいます。書かれている内容をざっと把握して、「この記事に知りたいことが書いてある!」と感じることができれば、ぜひ記事にアクセスして詳細を確認してほしいです。

正規化半径で困る状況あるある

OpticStudioのいくつかの面、オブジェクトには「Norm Radius」「正規化半径」というパラメータがあります。例えば、ゼルニケ面、バイナリ面、拡張多項式面などです。

正規化半径をパラメータとしても持っていない面もあります。その代表は、非常に広く利用される偶数次非球面です。よく困るのが、偶数次非球面の非球面係数の次数を拡張した面として用意されている、拡張非球面には正規化半径パラメータがあることです。

下で示した偶数次非球面、拡張非球面の式は、面のサグを表す数式です。サグとは、レンズの表面が面の頂点に対してどのくらい飛び出しているか、もしくは凹んでいるかをレンズ単位で表した長さ量になります。

この ρ について、「正規化半径ってパラメータは何を意味するのか?」「偶数次非球面を拡張非球面に変換するとき、正規化半径パラメータはどう扱えばいいの?」と筆者も含めて多くのエンジニアがヘルプファイルをさまよったことと思います。

ヘルプファイルの検索で「正規化半径」と検索しても、正規化半径をパラメータにもつ面やオブジェクトばかりが上位にきて、正規化半径そのものの説明が見つからない。。。みたいな。正規化半径の数式付きの説明は、なんと「放射状グレーティング」のページで見つけました(筆者の探し方が悪いのかもしれません)。

正規化半径を使わないとき (偶数次非球面)

上の数式から得られるサグ量がレンズ単位(例えば[mm])であることを念頭に、第2項のシグマで表現される多項式の次元を確認します。偶数次非球面の場合、多項式の単位を[mm]とするには、非球面係数 αi の単位が[(mm)1-2i]で変化します。

具体的には、r2 の非球面係数の単位は[1/mm]で、r4 の非球面係数の単位は[1/mm3] になります。そのため、次数が上がるごとに、一般的に非球面係数は急激に小さくなっていき、オーダーが大きく異なってしまいます。

平行光を集光するように簡易に設計した、下図の偶数次非球面の各係数を見ると、オーダーが-3乗から-9乗まで大きく異なります。これは、係数の単位が長さの逆数のべき乗になっているためです。

もう1つの特徴は、レンズを倍率でスケーリングしようとすると、係数が長さのべき乗の単位を持っているため係数の変換が分かりにくいことです。形状をそのままに面の大きさを2倍にスケーリングしたとき、各係数の変化は以下のようになります。同じく、2倍のスケールに対して非球面係数は逆数のべき乗になることが理由です。

図 65-1 偶数次非球面の例。係数ごとにオーダーが大きく異なり、スケーリングではオーダーが保持されない。(2023/1/2 図を更新)

正規化半径を使ったとき (拡張非球面)

このような非球面係数の急激な変動を抑制し、スケーリングを直観的にする方法として導入されたのが、正規化半径です。拡張非球面を例に、正規化半径の意味を確認します。

注目は、偶数次非球面では高次になるほど [mm2i] で大きくなっていた長さの次元が、正規化半径 R[mm] を導入することで無次元になりました。そのため、非球面係数の αi の次数が常にレンズ単位 [mm] に固定されました

上で示した偶数次非球面と同じ形状を、「正規化半径=レンズ開口半径」に設定した拡張非球面で表現します。明らかに、各係数のオーダーの差が小さくなりました。

また、面の大きさを2倍にスケールする場合、正規化半径と非球面係数を単純に2倍にすることで達成できます。これは、偶数次非球面のスケーリング規則よりもかなり直観的です。

図 65-2 正規化半径を使用した拡張非球面の例。非球面係数同士のオーダーと、スケーリング時の倍率が直観的。(2023/1/2 図を更新)

上の例は6乗の項までを使用したサンプルを示しましたが、さらに大きな次数の非球面まで使用したい場合は、係数の大きさの比較やスケールのしやすさは意外と重要になります。偶数次非球面の数式は光学業界のスタンダートとして広く使われているので、係数の単位には注意が必要です。

正規化半径が使われているときの光線追跡

技術記事の説明には、「ある面の半径方向高さ r に到達した光線の、正規化された半径方向の開口座標は ρ = r/R で与えられ、ここでの R が正規化半径です。」とあります。この部分を少し詳しく説明します。

  • 正規化半径が使用された非球面(拡張非球面など)に光線が入射します。
  • サグの式の第1項の標準面のサグ量は、光線の座標 r で計算されます。
  • 第2項の非球面のサグ量を計算するとき、光線の座標が正規化半径 R で除算されます。
  • 正規化された光線座標 ρ での非球面のサグ量が計算されます。
  • そのサグ量を元の光線の座標に戻してから、標準面のサグ量に追加します。
図 65-3 正規化半径をパラメータにもつ面のサグ量の計算プロセス。

同じような正規化が使われるのが、正規化視野座標と正規化瞳座標です。詳細は、正規化(視野, 瞳)座標_シングレットレンズの設計(OpticStudio入門) (7) を参照してください。

正規化半径の使いかた

正規化半径の使い方は3つあります。

1つ目は、正規化半径を1とすることです。これは「正規化せずに」レンズ単位の座標をそのまま使うことを意味します。拡張非球面の場合、正規化半径を1にすることで偶数次非球面と非球面係数の取り扱いを一致させることができます

2つ目は、正規化半径とレンズ半径と一致させることです。その効果は上で説明した通りです。この設定が、最も一般的に使われる方法ではないでしょうか。

3つ目は、正規化半径を実際に使用するレンズの有効径よりわずかに大きくする場合です。特に、非球面やゼルニケ面で高次項まで使用しているときに使用します。

理由は、興味のある領域を計算した後、境界の外側のサグ量(もしくは位相量)は急激に変化する傾向にあるからです。その場合、設計完了後に有効径の周辺にマージンを取るために少し直径を大きくすると、その部分の変動が大きくなってしまいます。これを解消するため係数を調整するのは設計のやり直しに等しいので、設計時から有効径の少し外側まで考慮しておきます。

正規化半径を使った設計の注意点

光学性能を高める設計において、正規化半径そのものは重要ではないです。どの正規化半径であっても最適な形状には到達できるからです。ただ、設計したデータを製造する場合は、光学部品メーカのフォーマット(メーカが取り扱える係数)に合わせる必要があります。

定義式の認識や正規化半径がずれていると、意図していたものと違う形状のレンズが作成されます。係数のリストとともに、サグデータをテキストやエクセルなど別のファイルで共有するのは、こういったミスを避けるためです。レンズを試作する際は、メーカとよく確認しましょう。

まとめ

ここでは、Zemaxのホームページからアクセスできる公開記事、What is the normalization radius (Zemax技術記事、英語) を取り上げ、「正規化半径」の意味と使い方を説明しました。回折面やゼルニケ面はほとんどが正規化半径をパラメータとして持っているので、不安なく使用してもらえれば幸いです。

ちなみに、OpticStudioの正規化半径はデフォルトで100が入力されます。正規化半径の意味が分かっていないときに100という数字を見ると、何か理由があるのかと考えてしまいがちですが、この数値には特に意味はないです

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