[22] MTFを最適化するメリットファンクション_Zemaxコミュニティ注目トピック (3)

OpticStudio

こんにちは。光学、光でのお困りごとがありましたか?

光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。このページでは、Zemaxコミュニティで注目されているトピックから、MTFを最適化するメリットファンクションの設定について取り上げます。

Zemaxコミュニティについては、こちらのページ で概略を説明しています。

結論

  • メリットファンクションのMTF値と解析ウィンドウのMTF値を一致させるには、オペランドのGridパラメータを1にする。他の解析機能でも同様に、オペランドと解析機能の出力結果が異なる場合がある。
  • MTFを最適化するオペランドには、幾何光学、FFT、ホイヘンス、コントラスト最適化、の4つの選択肢がある。
  • 従来のMTFを直接ターゲット化する最適化は、ある程度設計が進んでから出ないと使えない、計算に時間がかかる、というデメリットがあった。
  • コントラスト最適化は、上のデメリットを劇的に改善したデフォルトメリットファンクションの機能なので、最適化に困ったときは試してみる価値がある。

このページの使い方

このページでは、Zemaxコミュニティに投稿されたトピック中から、よく参照されているもの、コメントが多いもの、筆者が気になったものを取り上げて紹介します。よくある疑問や注目されているトピックについての情報を発信することで、何かしらの気づきとなれば幸いです。

興味を持ったトピックに質問やコメントをしてみると、世界のOpticStudioユーザやZemaxエンジニアからの回答があるかもしれません。

MTF最適化のためのメリットファンクション設定 (MTF setting in merit function for optimization)

トピックへのリンク: MTF setting in merit function for optimization

質問は、「メリットファンクションでMTFを返すオペランド(例えばMTFA)の結果と、解析ウィンドウの結果と同じにするには、どう設定すればよいか?」でした。

ディスカッションの内容

MTFAオペランドには、Samp(サンプリング)、Wave(波長)、Field(視野)、Freq(周波数)、Grid(計算アルゴリズム)、Data Type(出力する結果)、計6個の設定パラメータがあります。ZemaxエンジニアのHuiさんからの回答は、「Gridのパラメータを1にしてください。」でした。添付されたヘルプファイルによると、確かに「解析ウィンドウで使用されているGrid-baseのアルゴリズムを使用する場合は、Gridを1に設定してください。」と記載されています。これで、疑問は解消したと思います。

その後、元Zemax CEOのMarkさんから、MTFの最適化に関するコメントが追記されました。これは、「OpticStudioでもMTFの最適化」について、多くの示唆を与えてくれますので、ぜひ紹介したいです。少しはしょってご紹介します。

  • MTFの直接最適化は、ある程度よく設計されてからでないと使用できない。
  • ターゲットにする周波数でのMTFは、最適化を開始する前の状態でMTF曲線での最初の最小値より前で有意な結果を持っていなければならない。
  • コントラスト最適化は、回折限界ではない光学系でもMTFをターゲットにした最適化が可能。
  • おすすめは、コントラスト最適化を基本設定として、調整用にMTF*オペランドを追加すること。

OpticStudioでMTFを最適化する4つの方法

詳細な説明はヘルプファイルや技術記事、今後の光ラーニングのページに譲るとして、ここではOpticStudioで使用できるMTFを最適化するオペランドをご紹介します。

  • GMTA/GMTS/GMTT: 幾何光学的MTFと同じアルゴリズムで計算したMTF値を返すオペランド。回折限界から遠い光学系で使用する。
  • MTFA/MTFS/MTFT: FFT MTFに”近い”アルゴリズム、またはFFT MTFと同じアルゴリズムで計算したMTF値を返すオペランド。2つの計算手法を選択できることが特徴で、ほとんどのケースで前者を使う方が計算が高速で正確。計算の前提条件や使用上の制約は、FFT PSF (FFFベースの点像強度分布)と同じになる。MTFにとって特に重要なポイントは、「FFT MTFの計算は射出瞳で行われるため、像面の傾きや回転などは考慮されない=像面への斜め入射によるスポットの伸びは考慮されない」こと。
    • MSWA/MSWS/MSWT: FFT MTFにオプションとしてある、方形波でのMTF値を返すオペランド。実際に方形波でのMTFを計算しているのではなく、通常の正弦波でのMTFから方形波での結果を、所定の式を用いて換算して返す。
  • MTHA/MTHS/MTHT: ホイヘンスMTFと同じアルゴリズムで計算したMTF値を返すオペランド。回折限界の光学系で、もっとも正確なMTF値を返すオペランド。計算の詳細は、ホイヘンス PSFと同じになる。Ima Deltaは重要なパラメータで、ホイヘンスPSFを計算するエリアの大きさをコントロールする。デフォルトでは近軸計算で求まるFナンバーから自動計算されるが、スポットサイズがやや大きい場合はスポットが計算エリアをはみ出して不正確な値を返す場合がある。まずは、ホイヘンスPSFで解析結果をよく確認して設定する必要がある。正確な反面、とにかく計算の時間がかかる。あと、Markさんのいうとおり、光学系がよく設計された後でないと、Ima Deltaの設定が分からない。
  • MECA/MECS/MTCT: コントラスト最適化を使用するときに自動生成されるオペランド。Moore-Elliotコントラスト法に基づき、2本の光線の位相差を返す。上の3方式のようにMTFを計算するのではなく、2本の光線の追跡結果から位相差を計算するだけなので、計算コストが非常に小さいことが特徴で、光線収差を最小化するスポットサイズの最適化と同等の計算速度を実現する。詳細については、コントラスト最適化を使用した MTF 性能の最適化(技術記事) を参照のこと。
    コントラスト最適化を設定する最適化ウィザードについては 最適化ウィザード_シングレットレンズの設計(OpticStudio入門) (11 fin) も参照してください。

以上です。いかがでしたか?用途や状況によってうまく使い分けていきたいですね。

多くの結像系の光学設計の仕様にはMTFが設定されています。そのため、最適化においてもそのMTFを達成することをターゲットに置くことが一般的です。一方で、MTFの計算には時間がかかる傾向があり、最適化そのものを低速にします。それに対する一つのソリューションがコントラスト最適化になります。設計の初期段階から組み込めること、計算速度自体が(MTFを計算するオペランドと比較して)高速なので、結像系の設計シーンにおいては特に重宝します。最適化が思い通りに進まないときに、コントラスト最適化を使ってみると動き出すこともあります。

まとめ

このページでは、Zemaxコミュニティに投稿された「MTFを最適化するメリットファンクション」をトピックに取り上げ、説明を加えました。MTFを直接最適化のターゲットとするオペランドの一つ、MTFAには2つの計算アルゴリズムが選択できること、コントラスト最適化は他のMTFを最適化するオペランドと比較して計算速度と安定性に高い優位性を示すことを紹介しました。かなり筆者の主観が含まれているのでご留意ください。それぞれの機能の詳細や注意点については、今後発信できればと思います。

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