[33] .ZOS ってなに?_Zemaxコミュニティ注目トピック (4)

OpticStudio

こんにちは。光学、光でのお困りごとがありましたか?

光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。このページでは、Zemaxコミュニティで注目されているトピックから、OpticStudio 21.3で追加された .ZOS ファイルについて取り上げます。

Zemaxコミュニティについては、こちらのページ で概略を説明しています。

結論

  • .ZOSは既存の.ZMXファイルをバイナリ形式にした置き換えであり、現時点で.ZOS独自の機能があるわけではありません。
  • 少なくとも21.3では、.ZOSを.ZMXで出力する機能があるので古いバージョンとファイルを共有する方法は確保されています。ただ、将来のことは分かりません。
  • (2022年6月更新) OpticStudio 22.2のリリースで.ZMXファイルをデフォルトの保存形式として選択できるようになりました。詳細は、.ZMXファイルの復権 (.ZOSとの共存)__Zemaxコミュニティ注目トピック (22) を参照してください。

このページの使い方

このページでは、Zemaxコミュニティに投稿されたトピック中から、よく参照されているもの、コメントが多いもの、筆者が気になったものを取り上げて紹介します。よくある疑問や注目されているトピックについての情報を発信することで、何かしらの気づきとなれば幸いです。

興味を持ったトピックに質問やコメントをしてみると、世界のOpticStudioユーザやZemaxエンジニアからの回答があるかもしれません。

最新リリース21.3 / .ZOS ファイル (New release 21.3 / .ZOS)

トピックへのリンク: New release 21.3 (.ZOS 以外のディスカッションも含む)

質問は、「新しい .ZOSの利点は何? .ZARの置き換えなの?」でした。OpticStudioの最新バージョン 21.3の機能、特に.ZOSについては、OpticStudio 21.3 リリース、新機能レビュー でも簡単に紹介しています。

ディスカッションの内容

この投稿ページでは、21.3に含まれる様々な機能に関するディスカッションが行われています。本ページでは、その中から.ZOSに関連するディスカッションを抽出してご紹介します。

少し愚痴っぽくなってしまって恐縮ですが、フォーラムポストはチャット形式で対話できて便利な反面、後から読む人にとっては「結局どうなったの?」と結論を探すのが少し手間ですね。特に母国語以外だと、英語を勉強しろという話なのですけど。。。

.ZOSの位置づけ

ZemaxのNicholasさんによると、現時点では.ZOSは.ZMXの単純な置き換えであり、今後の機能改善・機能追加の基礎です。アーカイブファイル(.ZAR)の置き換えではありません。リリースノートに記載もあったとおり、「設計ファイルがバイナリ形式になっただけ」との理解でよさそうです。

.ZOSのメリット

同じくNicholasさんによると、.ZOSのメリットは以下の3点です。

  • セキュリティ: バイナリ形式はテキストで開いても読めず、情報漏洩のリスクが低くなります。
  • 読み込み時間: マシンが読みやすい形式なので、読み込みが早くなります。5~10%程度。
  • ファイルサイズ: 膨大なオペランドが入力されたエディタがあっても、ファイルサイズが小さくなります。

バイナリになったことによるメリットを具体化したものです。やはりセキュリティを求めるのは世の中の潮流でしょうか。.ZMXがテキストで確認・編集できることが初耳、というユーザも多かったのではないでしょうか?「古いファイルが開けないときの最終手段のトラブルシューティング」としてテキスト編集があったようですが、.ZOSファイルだと使えなくなります。

.ZMX (旧フォーマット)のメリット

セキュリティ面では問題がありそうな.ZMXファイルにも、古いフォーマットだからこそのメリットがあって、それを失いたくない古参と思われるユーザからもコメントがありました。

.ZMXはテキスト形式なので、外部ソフトウェアを用いて(OpticStudioを開くことなく)簡単に設計ファイルを作成できます。Zemaxは.ZMXのフォーマットに関する文書を公開していません。そのため、この方法はOpticStudioのファイルと、生成される.ZMXを比較してフォーマットを解析したのだと思われます。一般的には、これは推奨されないアプローチかと思います。

ZemaxもしくはOpticStudioが入っていないマシンでも、テキストを解析すれば設計データを確認できました。.ZOSだとファイルを内容を参照するためにOpticStudioが必要になるので、この手法は使えません。この状態はファイルさえあれば設計データにアクセスできることを意味するので、セキュリティ的には非常に危険と言えます。

.ZMXのメリットは、セキュリティのデメリットの裏返しになっています。

.ZOSへの要望

賛否両論あるものの、.ZOSへの置き換えの流れはセキュリティの観点から既定路線だろうと思います。.ZMXを使い続けたい主張は理解できるものの、その要望がセキュリティリスクを受け入れるほどの絶大なメリットを企業にもたらすとは考えにくいです。それを踏まえて、.ZOSそのもの、.ZOSを使いやすくするための提案がありました。

  • バージョンを記載したテキストファイルの自動生成: プロジェクトディレクトリを作成したときに、バージョン情報が(例えばファイル名に)記載されたテキストファイルを作成してほしい。結局ファイルを管理しているのはヒトなので、ファイル形式はヒトが簡単に認識でいる方が望ましいだろう、という要望かと思います。
  • OpticStudioがファイルを開く時間の短縮: 旧ZEMAXユーザにとって、今のOpticStudioがファイルを開くまでの時間は耐え難い(そこまで言いますか?)らしいです。OpticStudioがリリースされて7年になりますが、今でもZEMAXは相当数起動されているのではないかと思います。.ZOSになることがOpticStudioがファイルを開く時間の短縮に貢献するイメージは尽きませんが、何かしらの方法で改善してほしいです。
  • ファイルフォーマットの文書化: .ZMXでできていたOpticStudioを開かずに、外部プログラムでの設計ファイルの作成を可能にするように、.ZOSのフォーマットを公開してはどうか、という要望です。この要望には、Nicholasさんから現時点で可能性はない、と回答がありました。ZOS-APIを活用する方法の検討が提案されています。

.ZOS以外のディスカッション (参考)

ZemaxのWillianさんによると、今後のOpticStudioのリリースノートはコミュニティに投稿することになったそうです。以前のようなPDFでダウンロードすることはできないとのこと。その後、ZemaxのDonさんから、リリースノートのウェブページをPDFで印刷できます、との提案がありました。なるほど。

Zemaxが.ZOSへの移行を少し強引に進める動きには懸念が表明されています。これについては、 OpticStudio 21.3 リリース、新機能レビュー でも少し触れました。投稿の中にはやや過激とも思えるワードを使用したコメントが見られました。各人それぞれに背景があるので、どちらかが正しい結論付けられる議論ではありません。ただ、このコメントには多くのLikeがついており、賛同するかはわかりませんが、コメントはしなくても気になっているユーザが多いのだと思います。

まとめ

このページでは、Zemaxコミュニティに投稿された「21.3で搭載された.ZOSファイル」をトピックに取り上げ、筆者なりにまとめてみました。企業としては常に前に進み続けなければならない、私たちユーザとしては積み上げてきた知見や資産は継続的に活用したい。これは必ずしも相反するものではないと信じていますが、不満や不安をゼロで進めるのは非常に困難だろうと感じています。

コミュニティのような場でお互いの意見を出し合うことで、少しでも心理的な不満が少なく、業務への影響を最小限にして、それを大きく上回るメリットが引き出せるようになってほしいです。光ラーニングでは、今回のようなちょっと特異なトピックも取り上げていきたいと思います。

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