光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。このページでは、2022年8月~10月に発表された光学関連のニュースを取り上げ、OpticStudioとのつながりや、筆者の個人的なコメントを加えます。参考にしているページは、オプトロニクスオンライン、Optics.org、Laser Focus Worldなどです。
新製品関連
ウシオ電機、皮膚科向け紫外線治療器を発売 (OPTRONICS)
ウシオ電機、青色レーザーモジュールを発売 (OPTRONICS)
エプソン、両眼シースルースマートグラスを発売 (OPTRONICS)
ams OSRAM、265nm / 100mWの深紫外LEDを発売 (OPTRONICS)
エドモンド、非球面レンズのラインナップを拡充 (OPTRONICS)
ウシオ電機から、UVB-LEDを光源とした「セラビーム UV308 mini LED」と、25W出力の「青色レーザーモジュール」が発表されました。前者のLEDは名古屋大学との共同開発により、LEDを安定動作させる制御技術につながったとのこと。後者は複数レーザを合成する技術(詳細不明)によって小型化を達成したものです。光学ニュースピックアップ (2022年7月) で紹介したパナソニックコネクトの400W DDL加工機よりも単純な構成なのかもしれません。
エプソンが「MOVERIO」の新製品 (BT-45Cシリーズ) を発表しました。メインの用途が遠隔支援・作業支援で、メガネ型というよりは頭部に装着する形状となっています。お値段は単体で20万円ほどです。ディスプレイはカラー有機EL、気になる導光板についての具体的な情報は発見できませんでした。
ams OSRAMが高出力UV-C LEDの新製品 (OSLON UV6060) を発表しました。ありがたいことに、ホームページにはすでにOpticStudioの光線データも公開されており、シミュレーションがはかどります。
エドモンドの拡充された非球面レンズ、OpticStudioの市販レンズマッチングツールの対象にできるとCOTS品を活用した設計に非常に強力だと思います。そのためには、設計データが開示されている必要があります。OpticStudioがブラックボックスに対応できるようにするか、エドモンドが設計を開示するか、どちらも難しそうです。
研究開発関連
京セラ、白色レーザーと近赤光のナイトビジョン開発 (OPTRONICS)
ウシオ電機と島根大学、222nmの眼の安全と不活化の両立を実証 (OPTRONICS)
千葉工業大学と東京工業大学、水中光無線給電をCEATECでデモ (OPTRONICS)
NICT、8W超の新紫外LEDハンディ照射器を開発 (OPTRONICS)
日本電信電話 (NTT) メタレンズでハイパースペクトル画像を取得 (OPTRONICS)
Micledi and Kura partner to develop AR glasses (optics.org)
Meta-Imaging Sensor for High-Speed Aberration-Corrected 3D Photography (AZOOPTICS)
京セラは車のヘッドライト向けに「車載ナイトビジョンシステム」を開発しました。具体的には、白色光と近赤外光の光軸を一致させたヘッドライトと、RGB-IRセンサ、AI技術を活用した物体検出システムとのこと。白色レーザは、KYOCERA SLD Laser, Incの独自開発です。白色”レーザ”とうたっていますが、青色レーザ+黄色蛍光体で白色を作り出しているようです。このシステムの事業化は2027年以降とのことで、そこまでの技術の進化にも期待です。
ウシオ電機と島根大学の共同研究では、ウシオ電機が推し進める紫外線技術「Care222」で用いられる、222nm紫外線の人の眼に対する安全性が人で実証されました。
千葉工大と東工大の水中光無線給電、光ラーニングが大好きな水中光無線〇〇シリーズです。過去には、空を飛んでいるドローンにハイパワーレーザを打ち込んで給電する技術も開発されていたのを思い出しました。水中光無線通信とともに注目したいです。
情報通信研究機構 (NICT) が開発した深紫外LED照射機、なんと出力が8Wです。光源は265nmのLEDで、上でも紹介したams OSRAMのLEDが265nmで100mWに対して、かなり強力です。NICTのページの図を見るとLEDチップは20個なので、1チップ当たり400mW出ていることになります。
NTTはデジタルカメラのレンズをメタレンズに置き換えることでハイパースペクトル画像を取得する技術を開発しました。通常のデジタルカメラに適用することで、30fps、可視光から赤外光にわたってバンド数45のハイパースペクトル化像が撮影可能になりました。RGBの3チャンネルのデータから45バンドのスペクトル画像を生成するAIとは一体。メタレンズとなっているナノ構造パターンを設計するプロセスも気になりますし、システム全体を最適化する設計は興味深いです。メタレンズの画像を見る限り、斜め方向にピラーの大きさが変わっており、その周期にも意味深な変化が見て取れます。
MiclediとKuraがマイクロLEDディスプレイベースのARメガネを製造で提携します。Meclediが開発するマイクロLEDを、Kuraが製造するARメガネに組み込みます。下のレーザスキャン型との競争に注目です。MiclediはGlobalFoundriesとのマイクロLED製造に向けたパートナーシップも提携しており、実用化への期待も膨らみます。
Dispelix、ColorChip、Maradinがパートナーシップを組んで、レーザスキャンタイプのAR技術に取り組みます。Dispelixが回折素子ベースの導波路、ColorChipがPLC、MaradinがMEMSスキャナの技術を担当します。現在はマイクロディスプレイが主流の映像ソースの対抗馬として期待されます。サイズはこちらの方が小さくなると思います。
清華大学が3D画像の収差補正をメタレンズ、マイクロレンズアレイ、ピエゾ素子、デジタル補償光学で一気に適用する技術の発表がありました。筆者が確認したときはnatureのウェブページで公開されていました。上のNTTしかり、メタレンズ流行っていますね。
投資関連
ソニーとオリンパス、協業で内視鏡システムを開発 (OPTRONICS)
Planet Labs goes into the infrared with hyperspectral offering (optics.org)
スタンレーとホンダが190億円規模の包括的な資本業務提携契約を締結しました。「CASE : Connected (コネクテッド)、Automated/Autonomous (自動運転)、Shared & Service (シェアリング)、Electrification (電動化)」[1]対応の強化が目的の1つに挙げられており、特に前半2つでは光学技術の活躍が期待されます。
ソニーとオリンパスの医療事業での協業関係を強化しており、協業のあかしとなるロゴ「Innovation by Sony & Olympus」が製品に表示されるとのことです。ハードとソフトの両面が最適化されていくことが期待されます。
Planet Labsが新しい衛星コンステレーション用の衛星でハイパースペクトル衛星画像の取得を計画しています。衛星の名前「Tanager」は、鮮やかな羽色のフウキンチョウからきています。5nm幅、400バンド、地上分解の30mで、メタンや二酸化炭素ガスの放出状態を定期観測が可能になります。このレベルのセンサは大きな衛星の専売特許でしたが、少しずつ小さな衛星への搭載も始まっているようです。
まとめ
このページでは、2022年8~10月に発表された光学関連情報から、15件をピックアップしました。筆者の知識レベルで取り上げられるネタは制限されますが、これからも気になった情報をご紹介したいと思います。光学デバイスの高度化、メタレンズの台頭、業務提携など、動きが活発になっている印象です。
<参考>
[1] 産総研マガジン, https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/20220803.html
コメント