[96] ビネッティングファクタは最適化用_ビネッティングファクタの使い方 (3)

OpticStudio

こんにちは。光学、光でのお困りごとがありましたか?

光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。このページでは、ビネッティングファクタを使用して入射瞳(光学系に入射するビーム形状)を調整する理由が最適化であることについて説明します。

結論

  • ビネッティングファクタは、自動最適化でガウス求積法を使用できるように入射瞳を楕円形状に調整する機能、と言っても過言ではありません。
  • 最適化ウィザードで生成されるオペランドは、アパチャーによる光線の遮蔽(ビネッティング)は考慮せずに像面まで追跡されます。評価関数も、その光線を含めて計算されます。
  • 最適化ウィザードでビネッティングを考慮するには、瞳積分で矩形配列を選択します。ただし、光学性能の評価において、ガウス求積法と同程度の精度を出すには5倍以上の光線数が必要となります。

このページの使い方

このページで参考にした技術記事(ナレッジベース)は、ビネッティングファクタの使い方(Zemax技術記事、英語) です。この記事は、OpticStudioシーケンシャルモードのシステムエクスプローラにある、視野データエディタで使用するビネッティングファクタの使い方を説明した記事になります。

このページでは、ナレッジベースで使われている光学用語、技術用語、前提知識について、もう一歩踏み込んだ説明を加えていきます。ナレッジベースの長さは記事によってまちまちなので、いくつかのブロックに分けて注釈を加えています。この記事は3番目です。前の記事は、ビネッティングファクタの効果_ビネッティングファクタの使い方 (2) です。

ビネッティングファクタによる効率的な最適化

技術記事の「Using Vignetting Factors for Efficient Optimization」の項では、前のページで説明したビネッティングファクタを自動設定する主な利点として、自動最適化の効率化が挙げられています。ビネッティングファクタの使いどころを正しく理解する上でも重要なトピックとなるので、技術記事の内容を整理しながら確認していきます。

自動最適化における2つの光線サンプリング方法 (GQ vs RA)

自動最適化では、最適化のゴールをメリットファンクションエディタという表に記載していきます。このとき、最適化ウィザードという機能を用いることで、ベースとなるメリットファンクション(デフォルトメリットファンクションと過去は呼んでいた)を自動的に構築できます。最適化ウィザードについては、最適化ウィザード_シングレットレンズの設計(OpticStudio入門) (11 fin) を参照してください。

最適化ウィザードの設定項目の1つに瞳の積分方法(Pupil Integration)があり、選択肢として「ガウス求積法(GQ: Gaussian Quadrature)」と「矩形配列(RA (Rectangular Array)」が選択できます。それぞれの方法による瞳のサンプリング状況は、下図のようになります[1]。

図 96-1 最適化ウィザードで選択できる、矩形配列とガウス求積法による光線サンプリング結果

光ラーニングでの雑な説明では、「ガウス求積法のざっくりとした説明としては、「瞳内をある特定パターンでサンプリングして、ある特定パターンで重みづけをすると、少ない光線本数でも高い精度で光学性能を評価できる」スペシャルなテクニックです」。

ガウス求積法(GQ)のメリット・デメリット

光線数と精度のコスパの点で言えば、ガウス求積法の方が優れています。つまり、ガウス求積法の方が少ない光線本数で得られる光学性能を高精度に予測できます

しかし、ガウス求積法で光線をサンプリングする場合、注意が必要な制約があります。それは、サンプリングしたすべての光線が像面に到達できるという前提です。ガウス求積法は、どの瞳座標を選択するか、各光線に割り当てる重み(ウェイト)に重要な意味があります。サンプリングされた少ない光線のうち1本がアパチャーで遮蔽されると、計算される光学性能の精度も大きく損なわれます。

最適化ウィザードとメリットファンクションエディタの期待と現実

最適化ウィザードでガウス求積法を選択した場合、アパチャーによる遮蔽でサンプリングされた光線がケラれている状態を仮定します。私たちユーザとしては、以下の2点を期待します。

<期待1>アパチャーで遮蔽された光線のオペランドは生成されず、光学系を像面まで到達する光線だけを対象にオペランドが自動生成される。

<期待2>アパチャーで遮蔽された光線のオペランドが作成されたとしても、評価関数の計算には寄与しないように重みがゼロになるなど自動的に処理される。

残念ながら、これらはいずれも否です。つまり、ガウス求積法およびメリットファンクションエディタの計算は以下のルールに従って実行されます。

<現実1>ガウス求積法でサンプリングされた光線は、アパチャーでケラレるかどうかの判定はされずに、すべての光線に対してオペランドが生成される。

<現実2>遮蔽されて像面には到達しない光線のオペランドであっても、ビネッティングされたかどうかは関係なく、像面に到達したとしてオペランドは計算され、最終的な評価関数の計算にも反映される。

少し紛らわしい点として、解析機能やレイアウトウィンドウでは、遮蔽された光線の結果は表示されないのに、結果が目に見えづらいメリットファンクションオペランドでは通過していることです。

図 96-2 解析機能とメリットファンクションでの、ケラレ光線の取り扱いの違い。メリットファンクションでは遮蔽は検証されない。

ガウス求積法は光線全体によって光学性能を高精度に推定するため、ビネッティングが発生している場合は、ガウス求積法は使用できません。その場合は、以下の矩形配列による光線のサンプリングを選択する必要があります。

矩形配列のメリット・デメリット

矩形配列の場合は、サンプリングする1本1本の光線の重要度(重み、ウェイト)が等しいです。また、矩形配列には「ビネット光線の削除(Delete Vignetted)」オプションがあります。このオプションが有効になっている場合、最適化ウィザードがオペランドを自動生成するときに、そのオペランドの光線が像面まで到達するかを検証し、ビネッティングされている場合はオペランドを生成しません。つまり、ガウス求積法の<期待1>を、矩形配列は満足してくれます。

図 96-3 最適化ウィザードの瞳積分で、矩形配列を選択した状態。”Delete Vignetted”はアパチャーで遮蔽された光線のオペランド生成をスキップしてくれる。

ガウス求積法にできなくて、矩形配列で可能(光学性能評価の点で合理的)な理由は、ビネッティングされた光線を差し引いて光学性能を評価しても、その光線が精度に与える影響が小さいためです。

よって、矩形配列のメリットは、ビネッティングの影響を正確に考慮する光線のサンプリングが可能なことです。

一方でデメリットは、ガウス求積法と比べたときの、光線数に対する精度のコスパの悪さです。技術記事での比較結果を引用すると、ガウス求積法は63本の光線追跡で解析結果とメリットファンクションの計算結果の誤差が1%程度だったのに対して、矩形配列で同程度の精度を出すには4.7倍の298本の光線が必要でした。最適化中に何通りも設計パターンを試すので、矩形配列の場合は時間がかかってしまいます。

なお、解析機能の結果とメリットファンクションオペラ度の結果が一致しないことはよくあります。解析機能とメリットファンクションオペランドの数値の不一致_Zemaxコミュニティ注目トピック (19) を参照してください。

メリットファンクションオペランランドの光線は遮蔽されない

改めて、メリットファンクションエディタに設定したオペランドの大切なルールを確認します。それは、「一度エディタ内に設定されたオペランドはアパチャーによる遮蔽は検証せず、像面まで到達するとして計算される。」です。

ちなみに、全反射(TIR)も似たように扱われますが、TIRの場合は像面まで到達できないので、オペランドの計算が停止します。そのため、最適化自体が停止してしまいます。

最適化時のおすすめ設定=ビネッティングファクタ + ガウス求積法

以上をまとめると、アパチャーによるビネッティングがある光学系を最適化する場合は、視野データエディタでビネッティングファクタを設定し、最適化ウィザードの瞳積分でガウス求積法を選択する組み合わせが推奨設定となります。

逆に、ビネッティングがある状態でビネッティングファクタを設定せずにガウス求積法で光線をサンプリングすると、実際は光学系を通過しない光線も対象にしてメリットファンクションオペランドが生成され、評価関数は実際の光学性能を正しく推定できなくなります。

ビネッティングファクタで変形した入射瞳を楕円でフィッティングするデメリットは、楕円形状と実際の入射瞳形状の差分領域で光線の取りこぼしが発生しうることです。詳細については、Why vignetting factors should be removed when calculating Relative Illumination and MTF (Zemaxコミュニティ、英語) を参照してください。

図 96- 変形した入射瞳(w/o vig)を楕円(w/ vig)でフィッティングすると、緑線と赤線の境目の光線がサンプリングできなくなる。

まとめ

ここでは、Zemaxのホームページからアクセスできる公開記事、How to use vignetting factors (Zemax技術記事、英語) から、ビネッティングファクタの使いどころが自動最適化であることを説明しました。その理由は、最適化ウィザードの瞳積分で選択できるガウス求積法を正しく使用できるからです。また、遮蔽された光線に対する、解析機能とメリットファンクションオペランドの扱いの重要な違いについても説明しました。

<参考>

[1] G. W. Forbes, “Optical system assessment for design: numerical ray tracing in the Gaussian pupil”, J. Opt. Soc. Am. A, 1998

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