[95] ビネッティングファクタの効果_ビネッティングファクタの使い方 (2)

OpticStudio

こんにちは。光学、光でのお困りごとがありましたか?

光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。このページでは、OpticStudioでよく使われる用語、「ビネッティングファクタ」について説明します。

結論

  • ビネッティングファクタには、入射瞳の中心をディセンタさせるVDXとVDY、瞳形状を圧縮するVCXとVCY、瞳をZ軸中心に回転させるTANの5つのファクタからなります。
  • ビネッティングファクタの自動設定は、5つのパラメータを調整することで、実際の入射瞳形状を楕円形状でフィッティングします。
  • レイエイミングとビネッティングファクタが組み合わさったときの挙動は興味深く、今後の勉強課題としたいです。

このページの使い方

このページで参考にした技術記事(ナレッジベース)は、ビネッティングファクタの使い方(Zemax技術記事、英語) です。この記事は、OpticStudioシーケンシャルモードのシステムエクスプローラにある、視野データエディタで使用するビネッティングファクタの使い方を説明した記事になります。

このページでは、ナレッジベースで使われている光学用語、技術用語、前提知識について、もう一歩踏み込んだ説明を加えていきます。ナレッジベースの長さは記事によってまちまちなので、いくつかのブロックに分けて注釈を加えています。この記事は2番目です。前の記事は、ビネッティングとは_ビネッティングファクタの使い方 (1) です。

ビネッティングファクタ (Vignetting factor)

視野データエディタでは、1行ごとに物体面を点光源としてサンプリングした視野点を設定できます。設定パラメータは左から、X座標、Y座標、重みがあります。その右側にある5つのパラメータが、ビネッティングファクタです。視野データエディタの基礎については、視野(システムエクスプローラ)_シングレットレンズの設計(OpticStudio入門) (2) を参照してください。

図 95-1 視野データエディタ。いろいろな機能が搭載されていて、システムエクスプローラ内よりも便利なことが多い。

ビネッティングファクタは、OpticStudioに自動計算させることもできますし、私たちユーザがマニュアルで入力することもできます。マニュアルで設定する事例は多くありませんが、そのユースケースの1つが、半導体レーザ(LD)から出射する楕円状の発散ビームの定義になります。詳細については、非点隔差なし_シーケンシャルモードでレーザダイオード(LD)を設定する方法 (1) を参照してください。

各ビネッティングファクタの効果

まずはビネッティングファクタをマニュアルで設定したとき、各ファクタがどう影響するかを説明します。ヘルプファイルにも示されている、ビネッティングファクタの式は以下の通りです。ビネッティングファクタによって、もともとの正規化瞳座標Px, Pyから新しい正規化瞳座標Px’, Py’、さらにPx”、Py”になっています。

正規化瞳座標については、正規化(視野, 瞳)座標_シングレットレンズの設計(OpticStudio入門) (7) を参照してください。

図 95-2 正規化瞳座標(ピンクの円)を特定することで、1本の光線をどの方向に向けて出射するかを決定する。スタート地点を決定するのが正規化視野座標。

ディセンタ (VDX、VDY)

ディセンタのビネッティングファクタは、正規化瞳座標の位置をX方向、もしくはY方向にシフトさせる効果があります。正規化座標なので単位は無次元です。VDX=1にすると、入射瞳の中心位置が、もともとの位置におけるPx=1にシフトします。数式上、1.0よりも大きな数値を入れることもできます。

上から見ると、「入射瞳が大きさを変えずに移動している」のが分かりやすいです。視野タイプを「角度」で設定している場合、軸上視野であってもVDX、VDYが入力されると、斜め(角度成分を持って)に光が入っているように見えるのも面白いです。

図 95-3 ディセンタのビネッティング。入射瞳の位置がXY方向に平行移動し、そこに向けて光線が出射される。

圧縮 (VCY、VCY)

瞳の圧縮は、上記LDをビネッティングファクタで設定する方法で使用したビネッティングファクタです。数式が示すように、VCXとVCYはきれいな円からの乖離量を入力します。言い換えると、0に近いほど円に近く、1に向けて大きくなるほど圧縮率が高まって細長い楕円形になっていきます。

図 95-3 瞳を圧縮するビネッティングファクタ。X方向とY方向でビーム発散角度やビーム半径を非対称にできる。

回転 (TAN)

最後のビネッティングファクタは、瞳座標の回転、TANです。TANの単位は度(°)で、ディセンタと圧縮が適用された”後”の瞳座標をTANに入力した角度分だけ傾けます。回転の方向は、入射瞳のX軸をスタート地点として、Y軸のプラス方向に傾きます。3Dレイアウトやフットプリントダイアグラムなどをよく確認して、どのようにビーム(入射瞳の軸)が回転しているかを確認してください。

図 95-4 回転のビネッティング(TAN)と、すべてのビネッティングファクタが使用されたときの入射瞳形状。

TANの機能で重要なのは、MTFなどで重要な意味を持つタンジェンシャルとサジタルの取り方が変化することです。詳細については、OpticStudio でのタンジェンシャルとサジタルの考え方および光線の回転方法 (Zemax技術記事) を参照してください。

図 95-5 TANによる瞳座標の回転。像面座標と瞳座標は別々に定義されているのが、タンジェンシャルとサジタルの理解にとても重要。

役に立たない豆知識

同じ視野点で、異なるビネッティングファクタを設定することはできません。例えば、視野中心の座標 (Hx, Hy) = (0, 0)を2つセットして、視野1にVDX=1だけ、視野2にVDX=-1だけを入力します。その場合、視野データエディタの”上の行で設定されたビネッティングファクタ”が採用されます。この例の場合は、VDX=1が採用されて、VDY=-1の設定は無視されます。

同じ視野でビネッティングファクタが異なることはあり得ないので、妥当な結果ではあります。OpticStudioはノンシーケンシャルモードのネストルールのように下の行が優先の規則もあるので、少し意外でした。

ビネット(ビネッティングファクタ)の(自動)設定

システムエクスプローラの視野、もしくは視野データエディタには、ビネッティングファクタを自動的に設定するボタンがあります。システムエクスプローラには「ビネットの設定 (Set Vignetting)」ボタンがあり、視野データエディタのツールバーには「ビネッティングをすべてに設定 (Set All Vignetting)」ボタンがあります。

図 95-6 システムエクスプローラのビネットの設定ボタン。視野データエディタでは、黄色い丸っこいボタンでオン・オフができる。

筆者個人的には、ビネッティング”ファクタ”を設定していると感じるので、UIには多少の違和感を感じますが、それは些細なことです。要するに、各視野から見たときの入射瞳の形状を調整するビネッティングファクタが自動的に決定されるお手軽機能です。

ビネッティングファクタ自動設定のアルゴリズム

5つのファクタの決定方法を、ヘルプファイルを参照しながら確認します。説明には、瞳に上下左右端の4本のマージナル光線を追跡し、それらが各面のアパチャーを通過するように、中心位置と圧縮比率を推定する、とあります。より具体的には、以下のようなプロセスとなっています。

  1. 近軸入射瞳に向けてグリッド光線を出射します。それらは実光線として追跡され、各面のアパチャーを通過できる or 遮断されるが判定されます。
  2. すべての面を通過したグリッド光線のセントロイドが計算されて、実効的な入射瞳の暫定的な中心となります。
  3. 反復的な手法を用いることで、上下左右端のマージナル光線の正規化瞳座標が決定されます。
  4. さらに、デフォルトのXY座標に対してTANで回転させながら、より大きな楕円が通過できないかも検証されます。

0.001%の精度が得られるとのことですが、どのような計算に基づいているかはよく分かりませんでした。おそらく、ビネッティングファクタを調整して得られる4本のマージナル光線と、実効的な入射瞳のエッジの数値誤差のことと推察されます。

このアルゴリズムは多くの光学系で有効に作用しますが、万能ではありません。ビネッティングファクタをかけたのにマージナル光線がケラれる時もあります。その時は、私自身でマニュアルで調整する必要があります。マージナル光線がケラれているなら、その方向の圧縮ファクタ VCX or VCYを大きくするなどです。実際のゆがんだ入射瞳に対するビネッティングファクタの効果については、別のページで説明します。

筆者の疑問: レイエイミングとビネッティングファクタの自動設定

ここで気になる点があります。それは、レイエイミングとの関係性です。レイエイミングは瞳収差を解消する機能で、その効果の1つとして、主光線が必ず絞り面の中心を通過する (瞳座標の中心における瞳収差がゼロ) ようになります。

しかし、面のアパチャーによるビネッティングで入射瞳が歪み、ディセンタVDXとVDYに0でない数値が入力された場合、つまり実効的な入射瞳の中心が絞りの中心と一致しなくなった場合は、レイエイミングが目指す瞳収差ゼロの定義はどうなるのでしょうか。ちょっと自分でも何を言っているか分からなくなってきました。

図 95-7 ビネッティングファクタで入射瞳が移動したときのレイエイミングは何をもって瞳収差ゼロとする?

筆者の想像では、ビネッティングファクタが自動設定されるたびに変形した入射瞳が再定義され、それと絞り面との瞳収差がゼロになるようにレイエイミングが頑張って経路を探索する、ようなイメージでいます。つまり、ビネッティングファクタが先にあって、そのあとにレイエイミングが機能する順番です。今回ビネッティングファクタを検証するにあたって、過去のレイエイミングの検証とつながったことで湧いてきた新たな検証ポイントかもしれません。ぜひとも勉強してみたいと思います。

まとめ

ここでは、Zemaxのホームページからアクセスできる公開記事、How to use vignetting factors (Zemax技術記事、英語) から、ビネッティングファクタの効果について説明しました。また、視野データエディタにある、ビネッティングファクタを自動で設定する機能のアルゴリズムの概要を説明しました。クセあり機能のレイエイミングともかかわりがあるように思いましたが、その詳細は今後の勉強課題となります。

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