[90] エアリーディスクの豆知識_点像分布関数とは(2)

OpticStudio

光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。このページでは、スポットダイアグラムで表示されるエアリーディスクに関する豆知識を説明します。

結論

  • ビネッティングファクタのVCX、VCYでビームの形状を楕円に圧縮すると、エアリーディスクの形状も楕円になります。マージナル光線をアパチャーで遮蔽しても楕円にはなりません。
  • エアリーディスクは入射瞳が均一照明されていることを前提としており、アポダイゼーションを考慮しません。
  • エアリーディスク内部にる組まれるエネルギーは、全パワーの84%です。

このページの使い方

このページで参考にした技術記事(ナレッジベース)は、点像強度分布関数とは です。この記事は、OpticStudioの解析機能で点像分布関数 (PSF: Point Spread Function)の解析機能を網羅的に紹介した記事になります。理論的な部分が難しいくもありますが、それぞれの使い方や注意点がまとめられた、重要な内容です。

このページでは、ナレッジベースで使われている光学用語、技術用語、前提知識について、もう一歩踏み込んだ説明を加えていきます。ナレッジベースの長さは記事によってまちまちなので、いくつかのブロックに分けて注釈を加えています。この記事は2番目です。(1)は エアリーディスクって何?_点像分布関数とは(1) です。

マージナル光線がアパチャーで遮蔽されているときのエアリーディスク

結像系の光学設計では、所望の光学性能を達成するために、マージナル光線を光学系内部のアパチャーで意図的に遮蔽するケースがあります。遮蔽の仕方にもよりますが、それによって回折PSF(エアリーディスク)の形状も変化します。

OpticStudioでは、エアリーディスクの半径を計算するパラメータとして、実マージナル光線を追跡して計算される実効Fナンバーが使用されます。アパチャーでマージナル光線を遮蔽すると、光学系を通過できる一番外側の光線が変わるので、光学系としては実効Fナンバーが変化します。

実質的なマージナル光線の変化に伴って、エアリーディスクの半径も変わるのを予想(期待)しますが、OpticStudioのエアリーディスク半径の計算では、アパチャーによるマージナル光線の遮蔽は考慮されません。スポットダイアグラムに表示されるエアリーディスクは円形状のままです。

これはつまり、OpticStudioは、アパチャーで遮蔽されていても、マージナル光線はあくまで入射瞳の端をめがけて出射した光線として扱っていることを意味します。

図 90-1 アパチャー遮蔽でビネッティングファクタがオフの場合、マージナル光線がケラれてもエアリーディスク形状は変化しない。

ビネッティングファクタでビームを圧縮したときのエアリーディスク

アパチャーによる遮蔽によるエアリーディスク半径の変化を考慮するには、ビネッティングファクタをセットする必要があります。ビネッティングファクタは、視野データエディタにおいてセットしたり解除できます。楕円のガウスビームを簡易的に定義する方法としても使用しました。非点隔差なし_シーケンシャルモードでレーザダイオード(LD)を設定する方法 (1) を参照してください。

図 90-2 ビネッティングファクタVCXとVCY。入射瞳形状を楕円状に圧縮することで、光学系に入射するビーム形状を調整する。

ビネッティングファクタは、光学系を通過できるビームの形状を楕円形状でフィッティングする機能です。そのため、ビネッティングファクタで定義した楕円の光線群と、実際に光学系を通過できる光線群は一致しない場合がほとんどです。この誤差が、解析結果に影響を及ぼす場合があるので注意が必要です

ビネッティングファクタをセットすると、マージナル光線が光学系を通過できる楕円ビームの最も外側の光線として再定義され、そのマージナル光線によって実効Fナンバーとエアリーディスク半径が算出されます。

数式からも明らかなように、一般的なよく補正された結像レンズの場合、楕円ビームの長軸方向とエアリーディスクの長軸方向は逆になります。

図 90-3 ビネッティングファクタでビームを楕円にすると、XY方向でマージナル光線の高さの違いにより、エアリーディスクも楕円になる。

エアリーディスク計算は入射光が均一照度を前提とする

エアリーディスクは、入射瞳が均一に照明されたときに像面で得られるエネルギー分布で形成されます。OpticStudioでエアリーディスクを計算するとき、この入射瞳の均一照明の前提は常に使用されます。言い換えると、システムエクスプローラにあるアパチャーのアポダイゼーションの設定を無視します

例えば、ガウスビームの解析を行うためにアポダイゼーションをガウシアンにして、アポダイゼーションファクタを1にします。この場合でも、スポットダイアグラムで表示されるエアリーディスクのサイズは、アポダイゼーションタイプが均一の時から変化しません。

それでも、エアリーディスク表示の有用性には大きな違いはありません。光線がエアリーディスクと同等の領域に分散している場合、実際に得られるスポットサイズは、純粋な幾何光学で予測されるシミュレーション結果と一致しない可能性が高いです。

エアリーディスク内部に含まれるエネルギーは84%

エアリーディスク内部に含まれるエネルギーは、およそ84%となります。第2の明るい領域までに含まれるエネルギーは91%となります。ガウスビームの1/e2に含まれるエネルギーが86.5%で数値が似通っていますね。あまり有用ではないかもしれませんが、豆知識ということで。

図 90-4 左: ガウシアン分布は1/e2の範囲に86%のエネルギーが含まれ、右: エアリーディスクには84%のエネルギーが含まれる。

まとめ

ここでは、Zemaxのホームページからアクセスできる公開記事、点像強度分布関数とは から、スポットダイアグラムで表示できるエアリーディスクの豆知識を紹介しました。

アパチャーによるマージナル光線の遮蔽がエアリーディスク半径の計算では考慮されません。このルールは、実は最適化で使用するメリットファンクションのオペランドにも同じことが言えます。またの機会に光ラーニングでも取り上げたいと思います。

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