[58] ナレッジベースまとめ_OpticStudioでの回折面の取り扱い

OpticStudio

こんにちは。光学、光でのお困りごとがありましたか?

光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。 このページでは、Zemaxホームページで公開されている技術記事、How diffractive surfaces are modeled in OpticStudio (Zemax技術記事、英語) を短くまとめます。記事には記載されていない仕様も説明します。今は英語版のみですが、そのうち日本語版が追加させることを期待しましょう。

このページの使い方

技術記事(ナレッジベース)は、OpticStudioを深く知るうえで非常に有用ですが、有用な記事ほど長くなってしまいます。書かれている内容をざっと把握して、「この記事に知りたいことが書いてある!」と感じることができれば、ぜひ記事にアクセスして詳細を確認してほしいです。

「OpticStudioでの回折面の取り扱い」まとめ

  • OpticStudioの回折面には、回折格子のピッチが均一な面と、不均一な面があり、回折光線の角度の計算方法が異なります。
  • 回折格子のピッチが均一な場合、以下の回折方程式に従って回折光線の角度が求められます。
    • n1, n2: 回折格子前後の屈折率、M: 回折次数、λ: 光線の波長、d: 回折格子の周期、θ1: 光線の入射角度によって、θ2: 回折角度が決まります。OpticStudioでは周期幅の逆数を取って、1/d=T: マイクロメートル当たりの溝の数(グレーティング周波数)で入力します。
図 58-1 ピッチが等間隔の回折格子における回折光線の角度計算。ピッチ以外の格子形状は考慮されない。
  • 回折格子のピッチを面の位置によって変化させる(ピッチを不均一にする)ことで、所望の位置で所望の回折力が得られます。
    • 例えば、不等間隔溝グレーティング、バイナリ1、バイナリ2、グリッド位相、ユーザ定義面によって、回折格子のピッチが変化する回折面を定義できます。
    • OpticStudioは、このような面の回折力を連続的な位相分布(位相プロファイル)としてモデル化します。回折光線には位相プロファイルに基づいた光路長が加えられ、位相プロファイルの勾配(微分)によって回折角度が求められます。
図 58-2 回折格子のピッチが不均一な回折面。連続的な位相プロファイルによって、光路差と回折角度が計算される。
  • 回折面の設計プロセスは、位相プロファイルを設計することです。その後、設計した位相プロファイルを実現する回折格子構造を計算します。回折面の位相プロファイルの設計例として、バイナリ2面を使用した回折光学系の設計方法(Zemax技術記事) も参照してください。
  • OpticStudioの回折面のほとんどは、理想的な回折光学素子(DOE)としてモデル化されます。微細構造に起因する回折効率は計算せず、すべてのエネルギーが指定した回折次数の光線に割り当てられます。
    • 連続的な位相プロファイルを与えられる回折格子を、キノフォームと言います。サグ形状が階段状になっている回折格子を、バイナリ回折格子と言います。
    • OpticStudioのほとんど回折面は、キノフォーム回折格子を想定しています。ただ、OpticStudioの機能にキノフォーム回折格子の形状を出力する機能はありません。
  • OpticStudioのサブスクリプションライセンス+Premiumエディションには、回折格子の形状を設定して回折効率を計算する手法の1つ、RCWAを使用する機能(DLL)があります。機能の詳細については、表面レリーフ型グレーティングの回折効率を RCWA 法でシミュレーションする(Zemax技術記事) を参照してください。

所感

この技術記事は、OpticStudioが回折面をどのように取り扱っているかを説明した記事です。通常の屈折と違って、直観的には理解しにくい光学現象ではないかと思います。大切なのは、回折光線の角度は回折格子のピッチだけで決まり、現実世界で生じる回折効率の影響は考慮されないことです。

最近では、回折格子を積極的に用いたアプリケーションも多くなっています。ピックアップレンズなどですでに大活躍している回折光学素子ですが、微細構造の製造技術の発展も追い風に、ますます利用されるシーンが多くなることが期待されます。

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