[98] 光学ニュースピックアップ (2022年7月)

光学ニュースピックアップ

光ラーニングは、「光学」をテーマに様々な情報を発信する光源を目指しています。情報源はインターネットの公開情報と、筆者の多少の知識と経験です。このページでは、2022年7月に発表された光学関連のニュースを取り上げ、OpticStudioとのつながりや、筆者の個人的なコメントを加えます。参考にしているページは、オプトロニクスオンライン、Optics.org、Laser Focus Worldなどです。

James Webb宇宙望遠鏡が撮影した最初の画像公開!

First Images from the James Webb Space Telescope (NASA)

James Webb宇宙望遠鏡が撮影した画像がNASAから公開されました。光ラーニングで取り上げるまでもなく、日本語でもしっかりまとめられた記事が多数存在しますので、詳細はそちらにお願いします。

James Webbの光学系設計に採用された光学ソフトウェアの1つが、Zemax OpticStudioです。これに関するウェビナーが公開されていますので、JWST part 1: Designing the James Webb Space Telescope – webinar (Zemax ウェブページ)JWST part 2: Modeling the James Webb Telescope segments in OpticStudio – webinar (Zemax ウェブページ) を参照してください。James Webb宇宙望遠鏡最大の特徴ともいえる、セグメント化された主鏡をOpticStudioでどのように設定しているかが説明されています。

新製品関連 2 件

島津,長距離水中光無線通信装置を発売 (OPTRONICS)

ニコン,DX向カメラでマシンビジョン市場に参入 (OPTRONICS)

光ラーニングが勝手に注目している水中光無線通信で、島津製作所から製品「MC500」が発売されました。価格は3000万円で個人が買うものでは当然ありませんが、水中探索での貢献が期待されます。2020年2月に発売した「MC100」から通信可能距離、安定性を向上されています。宇宙と水中、全く異なる環境で光通信技術が期待されているのは興味深いです。

ニコンから超小型マシンビジョンカメラ「LuFact」が発売されました。LuFactは、Luminous Factory Cameraを基にした造語で、明るい工場を実現するカメラを表現しているそうです。特徴は画像処理ユニットをカメラユニットから分離することで実現した、「カメラヘッドの小型化」と「熱源からの分離」です。開発の背景が興味深く、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社の協力のもとにニコンが開発しています。ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングは、「CR2プロジェクト」といって、世界初・業界トップレベルの「改善」をパートナーと協業して実現するプロジェクトを立ち上げており、LuFactはそのプロジェクトから誕生しました。ちなみに、CR2は、「Collaborationで効率2倍活動」の意味とのこと (こちらの資料を参照しました)。他に進んでいるプロジェクトが気になります。

研究開発関連 3 件

パナソニックコネクト,青色DDL加工機を初公開 (OPTRONICS)

US researchers work on improving image sensors for machine vision (optics.org)

QinetiQ delivers ‘world first’ demo of laser-controlled drone (optics.org)

パナソニックコネクト (2022年4月にパナソニックスマートファクトリーソリューションズから変更) から、青色ダイレクトダイオードレーザー (Direct Diode Laser) 加工機の発表がありました。特徴は波長合成技術で、各レーザのわずかな波長のズレを利用して複数光源から出射するレーザを1本に合波しており、その出力は400Wになります。さらに、キロワット級への進化も目指しています。偏光など波長以外の合波技術を使用するのでしょうか。波長合成の原理は、2021年11月26日のプレスリリース に少し触れられており、現在の構成とは異なる可能性は十分ありますが、回折格子を利用した合波方式のようです。原理的には確かに合波はできそうですが、ぴったり1本に合わせるのに要求される精度はかなりのものではと思いました。

これからのセンサの進化の方向性として、デバイスの「Multimodal imaging」化が進みそうです。従来の光の強度に加えて、スペクトル、入射角度、位相までも検出可能になるかもしれません。それを実現するのはイメージセンサの各セルに構築されたナノスケールの光学機能性構造です。ソニーセミコンダクタソリューションズのようなセンサメーカから、画像処理機能が組み込まれたセンサが発表され、カメラヘッドが事前の画像処理を行うようになる中で、カメラヘッド自身が生み出すデータ量が爆発的に増大するトレンドもあります。”これまでのレンズ設計”で独立せず、センサデバイス、画像(取得データ)処理までシステム全体を考慮した設計、開発プロセスの重要性がますます高まっていると感じました。

QinetiQがドローンをレーザ無線光空間通信で制御するデモンストレーションに成功したと報告しました。このデモンストレーションでは、ドローンと地上局の双方向の通信が確立されており、ドローンの操作だけでなくドローンが取得した大容量のデータ(航空画像など)を地上局へ即座に転送できることを意味しています。技術課題はもちろん、相互のポインティングと大気揺らぎへの対応だったでしょうか。宇宙通信の大容量化に必須となる光空間通信ですが、地上環境でも様々なアプリケーションが検討されているようです。

デバイス関連 2 件

SSS,セキュリティカメラ用イメージセンサー発売 (OPTRONICS)

Zeiss backs electronic spectacles startup (optics.org)

ソニーセミコンダクタソリューションズから、セキュリティカメラ向けCMOSセンサ「IMX675」の製品化が発表されました。積極的にセンサの新製品リリースを続けるソニーセミコンダクタソリューションズは、光ラーニングも注目しています。用途をフォーカスすることでエッジのきいた製品になっているように思います。IMX675は、撮像した全画素を読み出しながら、特定の領域を高フレームレートで読み出すDual Speed Streaming機能を搭載しています。これにより、画像処理系に送り出されるデータ量が削減されます。そのほかの特徴も多く、Cu-Cu接続による消費電力削減、受光部面積を大きくしてダイナミックレンジを高める「STARVIS 2」、光の入射面に施した凹凸による回折で近赤外の吸収率改善などです。このデバイスで、「お安いカメラをたくさんつければいいじゃないか」システムに対抗できるか、市場の反応が気になるところです。

Zeissは、Morrow Eyewearが開発するボタン一つでレンズの屈折力を調整可能な液晶メガネ、「Autofocal」メガネの開発を支援しています。メガネ用レンズの間に液晶層を埋め込み、印加する電圧によって液晶の屈折力を変化させます。最新の愛ウェアと言えばAR/VRですが、メガネそのものの機能革新という意味で、この技術は重要になります。というか、この技術が特にARの使用感を大幅に改善する可能性もあるように思えます。

まとめ

このページでは、2022年7月に発表された光学関連情報から、8件をピックアップしました。筆者の知識レベルで取り上げられるネタは制限されますが、これからも気になった情報をご紹介したいと思います。ちなみに、6月は筆者の知識で取り上げられるトピックが少なかったので、スキップしていました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました